瀬戸内海に面した引田は、「風待ち」に適した天然の良港に恵まれたことから古くから栄えた港町です。
細い路地が入り組んだ町のあちこちに商家や醤油の醸造蔵がいくつも残り、当時の面影を感じさせます。
「讃州井筒屋敷」や「かめびし屋」の醸造蔵、旧引田郵便局などのランドマーク的な建物が、飲食店などとして使われており、観光の楽しめる町でもあります。
この記事では、引田の町並みの見所や、鉄道やマイカーで訪れる場合のルートや駐車場などについて紹介しています。
実際に訪問した時の訪問記も掲載しているので、こちらも参考にしてみてください。
醤油の醸造などで発展した、瀬戸内海に面した港町
狭い路地のあちこちに、商家や醤油の醸造蔵が残る
香川県のほぼ東端、瀬戸内海の播磨灘に面した引田(香川県東かがわ市)は、古くから栄えた港町です。
小さな湾の奥に港があり、引田城のあった城山に北側を守られた地形でもあったことから、航行に適した風が吹くのを待つ「風待ちの港」として多くの船が寄港しました。
江戸時代には90軒を超える商家が建ち並び、また特産品である砂糖や塩を用いた醤油の醸造も盛んで、大変な賑わいだったと言われます。
今でも、細い路地が入り組んだ町のあちこちに豪商の家や醤油の醸造蔵が数多く残り、当時の面影を感じさせます。
この風景は「四国八十八景」にも選ばれているということです。
古い建物の中でもっとも代表的なのが「讃州井筒屋敷」(旧佐野家住宅)で、酒や醤油造りを行っていた江戸時代の商家。
佐野家は、江戸などの全国へ醤油を出荷して「引田醤油」の名を広めたという豪商でした。
今も残る建物は江戸時代の後期から明治時代にかけて建てられたもので、非常に立派なお屋敷なのが、写真でも分かると思います。
「かめびし屋」の岡田家、庄屋だった「日下家」の屋敷と並んで「引田御三家」と呼ばれます。
母屋の内部や庭園などを見学することができて、改装された蔵は特産品などを売るお店となっています。
赤い壁が特徴的な、「かめびし屋」の醤油蔵
引田のシンボル的存在の一つとなっているのが、「かめびし屋」の赤壁です。
江戸時代以来の歴史をもつ醤油の醸造元で、今なお伝統的な製法によって醤油を作り続けていることで知られます。
1960年代に彫刻家の先生の指導によって内部の改装が行われ、赤く塗られているのもその一環とのことですが、魔よけとしての意味も持つようです。
非常にインパクトのある風景ですが、年月を経た今では確かに神社などの朱塗りのような趣も感じられます。
敷地内にある18棟の醤油蔵等の建物が登録有形文化財となっており、蔵の中にあるうどん屋ではもろみを用いた名物のうどんを食べることもできます。
カフェとして利用されている、おしゃれな旧引田郵便局
昭和の初めごろに建てられた旧引田郵便局のモダンな建物(登録有形文化財)は、引田のもう一つのランドマークでしょう。
八角形の窓がリズミカルに並ぶ、特徴的なデザインが印象に残るこの建物は、現在は「風の港館」としてリニューアルされています。
正面の頂に残された「〒」マークが、かつての郵便局であることを分かりやすく教えてくれます。
館内は「ヌーベルポスト」というカフェ(月~水曜日定休、季節、イベントにより変動あり)となっていて、外から建物を眺めるだけではなく、中でゆっくりお茶を飲んでくつろぐこともできます。
カウンターなどの郵便局当時の雰囲気が残る、天井が高くて広々とした建物の中も素晴らしいので、ぜひ訪れていただきたいスポットです。
(通りの向かい側には、「引田御三家」の日下家住宅もあります)
アクセス方法
鉄道を利用する場合
JR高徳線の引田駅が町の玄関口にあたる場所にあり、鉄道で訪れるには便利な町です。
高徳線の起点である高松駅からは、特急「うずしお」で40分ほど。運賃は特急料金(自由席)込みで1,500円。
列車の本数は、1~2時間に1本くらいです。
新幹線を利用する場合は、岡山駅で快速マリンライナーに乗り換えて高松まで一時間弱なので、トータルでは1時間半ほどで到着します。
運賃は高松で特急「うずしお」に乗り換えて2,760円(自由席)です。
マイカー利用の場合
高松自動車道がすぐ近くを通る
引田の町のすぐ近くには、高松自動車道の引田インターがあって、マイカー利用で訪れるにも非常に便利な町です。
高松道は高松方面からも徳島方面からも利用可能な高速道路なので、京阪神方面から淡路島を通ってやってくることもできます。
高松からは約35キロで26分、徳島の鳴門からは約25キロで20分程度で到着します。
広大な無料駐車場がある
古い町並みの辺りから徒歩5分程度のところに、観光する場合に限って利用できる「引田町駐車場」という無料駐車場があります。
非常に広大な敷地となっているため、簡単には満車になることもなさそうで、安心して利用できそうです。
アイスティーを飲む夏の午後 ~引田の町並みを歩いてみました~
二つの鉄道路線を乗り継いで、高松から引田へ
引田を訪れたのは8月のことで、宇多津や多度津の町並みを歩いてから高松に一泊し、その翌日に鉄道で引田へ向かいました。
高松から引田までは、JR高徳線の特急「うずしお」で40分ほど、鈍行でも1時間半くらいです。
なのですが、宿泊したのが高松市内の瓦町駅近くで、ここは高松琴平電鉄(ことでん)の大ターミナル。
一旦高松駅まで出ても良かったのですが、引田まで行く途中にある志度まではことでんの志度線がJR高徳線と並行しているので、とりあえず琴電志度まで行ってみることにしました。
せっかくなので志度寺を参拝して、旧街道沿いの町並みや志度湾の海を眺めてからJRに乗り換え、50分ほどで引田へ。
引田駅は、古い町並みのある讃州井筒屋敷の辺りからは500メートルくらいしか離れていません。
讃岐街道や旧引田郵便局周辺の町並みを眺めながら北上し、10分ほど歩くともう町並みの中心部でした。
もろみうどんと、カフェで過ごした夏の午後
辺りを撮影して回るうちにお昼時になり、「かめびし屋」の中にある茶屋で「もろみうどん」をいただくことにします。
麺は太目で、腰のあるさぬきうどんの感じとは違いましたが、もろみの強い香りがあって独特なおいしさでした。
引田へ来たなら、ぜひ食べておきたいところです。
続いて、引田港や誉田八幡神社などを歩いて回りましたが、何せ8月中旬なのですごい炎天下、ついに耐え切れなくなって旧引田郵便局へ。
八角形の窓がおしゃれなこの建物、「ヌーベルポスト」というカフェとして利用されているので、最後はここで一休みしようと思っていたのでした。
帰りの特急までの時間、涼しい風を浴びながらアイスティーを飲んでゆっくりするうちに、汗もひきました。
引田という名を見ると、その静かな夏の午後が思い出されます。
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