飛騨地方の中心的な町である高山は、険しい山々に囲まれた小さな盆地の中にある町です。
16世紀の終わりに金森長近が城下町としての町づくりを行い、武家地や町人町などを整備しました。
その後は幕府の直轄地である天領となって陣屋が置かれ、代官の統治の下で引き続き発展することになりました。
「飛騨の小京都」とも呼ばれる高山には、商家や造り酒屋などの伝統的な家屋が、狭い通りにずらりと並ぶ古い町並みが残ります。
その中心となるのが、国の保存地区ともなっている「三町」と呼ばれる区域で、特に上三之町ではいかにも城下町らしい風情のある、見事な景観が見られます。
この記事では高山の町並みの見所や、実際に鉄道やマイカーなどで古い町並みを訪れるためのアクセス方法や駐車場について紹介しています。
実際に訪れた際の訪問記も掲載していますので、こちらも参考にしてみてください。
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金森長近が作り上げた城下町、高山
高山は岐阜県の北部、飛騨地方の中心となる町です。
宮川(神通川)とその支流の川上川が合流する場所に当たる、小さな盆地の中にある町で、周囲を険しい山々に囲まれて隔絶されたような地形となっているのが特徴です。
標高も海抜約600メートルほどと、かなりの高地にある町です。
16世紀の終わりに飛騨国の国主となった金森長近が、現在の市街地の東側にある城山に城を築き、本格的な城下町の整備を行いました。
武家地と町人町(現在の三町)、東山の寺院群などが設けられて、これが「飛騨の小京都」とも呼ばれることになる高山の町の始まりとなります。
金森氏による統治は100年ほどで終わり、その後の高山は幕府直轄地である天領となりました。
城に変わる支配の拠点として高山陣屋(主な建物が現存)が置かれ、代官・郡代による支配が明治維新まで続きました。
飛騨高山 本陣平野屋 花兆庵
かつての商人町、「三町」の見事な町並み
高山の町で、古い町並みが最も良く現存しているのは、宮川の東側にある一之町から三之町の辺りで、安川通りを境に北側が下町、南側が上町に分かれます。
この辺りの区域は「三町」と呼ばれていて、特に上町側を「三町筋」「さんまち通り」などと呼ぶ場合が多いようです。
中でも「上三之町」の通り沿いには特に見事な景観が残り、観光地としても最も人気のある区域となっています。
かつての商人町であったこの区域には、豪商の住んだ商家や造り酒屋などが、狭い通りに沿ってずらりと連なります。
通りの側に向かって低い屋根が突き出し、その軒下にベンガラ塗りの出格子が続く様子には、いかにも城下町らしい風情が感じられます。
伝統的町並みとして、ほとんど理想的な景観が見られると言っても過言ではないと思います。
この「三町」と下町側の「下二之町・大新町」の二つの地区は、それぞれ国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)にも選定されています。
地区内の伝統的建造物の数は、合わせて400近くにも及んでいます。
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観光客で混雑することもしばしば、やはり早朝の散策がおすすめ
三町の狭い通りは、盆地の中にある密度の高い町という実感があって大変に良いのですが、たくさんの観光客が集中すると混みあってしまうこともあります。
特に、上三之町の南側には高山陣屋や旧高山町役場(明治時代の庁舎が高山市政記念館として公開されている)、宮川にかかる中橋の風景など近くに見どころが多いこともあって、時期や時間にもよると思いますが、町並みの撮影が困難というレベルの人混みに遭遇することもありました。
そのようなときは、いくらか道幅が広く、お店などの数も少なめとなる二之町の通りのほうが、比較的ゆったりと歩けるかも知れません。
人気の観光地には共通して言えることですが、現地宿泊で早朝などの散策がおすすめと言えます。有名な朝市を見に行くのも良いでしょう。
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アクセス方法
鉄道利用の場合 ~町の玄関口、JR高山駅が便利~
高山の町の玄関口となっているのが、JR高山本線の高山駅です。
駅の周辺、特に東側はホテルや飲食店なども多数集まる町の中心地で、そこから徒歩10分ほどで宮川を渡った先に三町の古い町並みがあります。
密集した市街地のにぎわい方を見ていると、隔絶された山の中にこのような大きな街があるのが不思議な感じがしてきます。
高山本線には、主に名古屋駅からの特急「ひだ」が直通で走っていて、所要時間は約2時間半。
料金は指定席利用で名古屋・高山駅間が6,140円となっています(2023年7月現在)
本数は1日10往復とかなり多く、さらに朝と夕方には岐阜駅から米原を経由して大阪まで直通する列車もあり(通称「大阪ひだ」、通常の「ひだ」と連結)、観光地としての高山方面がいかに重視されているかが分かります。
なお、2023年には全列車が新型車両(HC85系)に切り替わったことでも話題になりました。
マイカー・レンタカー利用の場合
高山清見道路(中部縦貫道)の高山インターが近い
町のすぐ北側には、高山清見道路(中部縦貫自動車道)の高山インターチェンジがあります。
インターを降りてからは約5キロほど、所要時間は15分程度です。
また、市街地の西側にある高山西インターチェンジも利用可能で、国道158号経由で三町の辺りに直接向かうことができます。
この高山清見道路は、愛知方面(一宮ジャンクション)と富山方面(小矢部砺波ジャンクション)を結ぶ東海北陸自動車道の支線のような道路で、つまり名古屋や富山から高速道路で直結していることになります。
将来的には中部縦貫道の一部として、福井や長野方面とも直結することになる予定です。
なお、関東方面からの場合は中央道・長野道経由で松本から岐阜県境を超えて高山まで、というルートもありますが、この区間は難所の安房峠を除いて高速道路などが整備されていない山間路なので、距離の割には時間がかかるルートとなっています。
(この区間が将来的に中部縦貫道として整備されることになります)
東海北陸道・清見高山道路経由
松本から安房峠経由
市内に市営の駐車場が多数あり、町並みまで徒歩数分のところも
高山市街には市営などの駐車場が多数ありますが、三町の古い町並みを訪れるのに便利なのが、高山陣屋にも近い立体駐車場の市営神明駐車場で、約50台が駐車可能です。
上三之町の通りの入り口まではわずか100メートルほどです。
ただ、市営神明駐車場は混みあうことがあるので、その場合は市営えび坂駐車場も便利です。
こちらは平面で約50代駐車可能。三町の町並みまでは徒歩数分ですが、その途中もずっと古い町並みが続くので、それも観光の一部と考えてよいでしょう。
どちらも昼間の料金は30分150円です。
なお、高山市役所の公式サイトでは、市内の駐車場の混雑状況をほぼリアルタイムで確認することができます。
非常に便利なので、こちらもうまく活用しましょう。
http://parking.takayama.gifu.jp/
(高山市役所公式サイトの駐車場混雑状況案内ページ)
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お盆の朝7時、町並み撮影アタック ~高山観光のダメな例~
人気過ぎて撮影の難しい高山の町並み
飛騨の高山に最初に行ったのは、まだ学生だった頃の「合宿」という名の観光旅行。1990年代のことで、京都からは直通列車で6時間くらいかかったんじゃないかと思います。
この頃はまだ古い町並み巡りを始める前でしたが、上三之町で木工品を買ったり(今でも使っている)、醤油味で甘くないみたらし団子をみんなで食べたりと、町並み観光を楽しみました。
すでに保存地区でしたから、商家が建ち並ぶ風景は、今とさほど変わりありませんでした。
その後、また観光をする機会はありましたが、高山の悩ましいのは、特にハイシーズンの観光客があまりに多すぎること。
「古い町並み」と検索すると真っ先に「高山」が出てくるくらいで、とにかく人気の観光地なわけです。
そういうわけで、町並みの写真撮影がなかなか難しい。どう撮っても、人混みが写ってしまいます。陽の当たり方などを考えると夏の朝とかを狙わないとなあ、と思っていました。
ところが、たまたまお盆の時期に友人たちと岐阜方面にキャンプに行くことになり、適当に走ってたどり着いたのが高山市内の美女高原キャンプ場。
高山市と言っても実はとんでもなく広大で、大合併の結果、その面積は大阪府を超えて東京都に匹敵するというすさまじさなのですが、このキャンプ場は高山市街から10キロしか離れていませんでした
キャンプの朝に町並みへと走る
キャンプの翌朝は大体、日の出とともに起きて動きだすことになります。
その時は高山観光の予定は特になかったのですが、これなら朝の町並み撮影にアタックできるぞ、と思い立ちました。
本来は、高山市内に泊まって朝の散歩をしながら撮影、みたいな優雅な状況を想定していたわけですが(みなさまにはそちらを強くお勧めします)、全然違う形で撮影に走ることになりました。
朝ご飯を食べてからテント類を片づけ、車で高山市街へ向かいます。10キロほどなので、すぐに到着。その時点で7時半くらいでした。
さすがに観光客は少なかったのですが(それでも皆無でないのがさすが。朝市やってますしね)、空になんだか雲か霧みたいなのがかかっていて、どんよりした空気。山間部の川沿いなどにある町では、ありがちな朝の天気です。
いまいち空振りだったか、まあこの雰囲気も悪くないけどと思いながら町並みを歩いていると、段々人も増えて来ました。ところが、その時間になってようやく青空が。
すでに8時近く。残り時間は少ないはずで、急いで三町の辺りを撮影しました。
幸い、まだ店が開いていないので、観光客の波もそれほどではなく、どうにか普通に写真が撮れました。
最後に、繰り返しになりますが、こういう「観光」は全くおすすめしませんので、ぜひ市内の良い宿に泊まって、のんびりと朝の散歩を楽しんでください。
僕も次は必ずそうします。
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