奈良県の中部に位置する五條・新町は、伊勢街道などが交わる地点に発展した宿場町です。
吉野地方の中心として代官所が置かれ、ごく短期間存在した「五條県」の県庁所在地だったこともあります。
紀州街道(伊勢街道)の宿場町だった新町通り沿いなどに古い町並みが残り、長い歴史を持つ町ということもあって、多様な様式の家屋が見られることが特徴です。
この記事では、そんな五條の町並みの見所や、マイカーや鉄道などで訪れる場合のルートや駐車場などについて紹介しています。
実際に訪問した時の訪問記も掲載しているので、こちらも参考にしてみてください。
大和と伊勢を結ぶ交通の要衝だった宿場町
吉野地方の中心として代官所が置かれた
奈良県の中部、吉野川の北岸に位置する五條・新町(奈良県五條市)は、伊勢街道、紀州街道などいくつもの街道が交わる地点に発展した宿場町です。
吉野地方の中心として江戸時代には幕府の直轄地である天領となり、代官所が置かれました。
明治の初めごろにごくわずかな間だけ存在した「五條県」の県庁所在地だったこともあります。
現在でも、奈良と和歌山を結ぶ国道24号線と十津川方面へのメインルートである国道168号線が市内で分岐し、JR和歌山線の五条駅や十津川地域を管轄する国の出先機関などが置かれているなど、奈良県南部の交通の要衝であり、地域の中心的な町となっています。
「新町通り」の周辺に古い町並みが残る
主に古い町並みが残っているのが、国道24号線と168号線、310号線が交わる本陣交差点の南側(新町口)の辺りから、新町通りを1キロほど西にずっと進んで、大和二見駅の東側辺りまでの一帯です。
国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)にも選定されています。
本陣交差点の周辺(ここが本来の「五條」)は御霊神社を中心に発達した区域で、五條代官所が置かれるなど、古くからの町の中心地だった場所です。
国の重要文化財に指定されている、栗山家住宅もここにあります。
また、新町通りはかつての紀州街道(伊勢街道)で、その沿道は宿場町として、また二見城の城下町として商家が集まるなどの繫栄を見せました。
江戸末期に建てられた旧辻家住宅(政治家の木村篤太郎生家)が、「五條市新町まちや館」として整備されていて、内部を見学することができます。
このように成り立ちが複雑で、長い歴史を持つ町並みということもあって、建ち並ぶ町家も地区や時代ごとに多様な様式のものとなっているのが特徴です。
約1キロに及ぶ新町の町並み
「五新線」の遺構が町のあちこちに残る
かつて、この五條から十津川村や本宮町の辺りを経由して紀伊半島を縦断し、和歌山の新宮までを結ぶ「五新線」という壮大な鉄道路線の建設計画がありました。
大塔村の阪本までの区間は実際に「阪本線」として着工され、いくつものトンネルや橋などが造られたのですが、この計画は結局中止となり、数多くの遺構が残されることになりました。
起点だった五條の町なかにも、まるで巨大な遺跡のような高架線のコンクリート橋梁が残されており、古い町並みが残る新町通りの辺りでは、今まさに吉野川を渡ろうとしているかのような、立派な高架線の橋げたが見られます。
アクセス方法
マイカー・レンタカー利用の場合
京奈和自動車道の五條インターが近い
町の北側を「京奈和自動車道」が通っていて、市街地のすぐ近くに五條インターがあります。
インターから新町の辺りまでは、わずか数分の距離となっています。
「京奈和自動車道」は京都府から奈良県内を通って和歌山までを結ぶ道ですが、京都の木津川から奈良の大和郡山まではまだ未開通で、橿原市内にも一部未開通の区間があります。
その代わり、奈良・和歌山県内の区間は通行料が無料(京都府区間は有料)で、非常に便利な道となっています。
未開通の区間も、国道24号線バイパスなどが使えるので、渋滞しがちなことを除けばそれほど不便はないでしょう。
「まちなみ伝承館」の駐車場が利用できる
新町通り沿いの、まさに古い町並みの中にある「五條市まちなみ伝承館」に無料の駐車場が10台分整備されています。
「まちなみ伝承館」は明治時代の町家の内部を見学できる施設で、まずはここに立ち寄ってから町並みを歩いてみるのも良いでしょう。
なお、新町通りは大変狭い一方通行の道なので、走行時には注意が必要です。
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JR和歌山線利用の場合
JR和歌山線の五条駅(駅名はこのような表記になっています)から新町の町並みまでは約1キロで、徒歩15分程度です。
鉄道を利用して訪れるにもそれほど不便はないと言って良いでしょう。
五条駅までは、大阪の天王寺から大和路快速利用で1時間30分ほど、運賃は1,170円となっています。
ただし、和歌山線はそれほど列車の本数が多くはなくて、大和路線からの分岐駅である王寺駅からは一時間に2本程度しか走っていません。
途中の高田駅で和歌山線を離れて桜井線(万葉まほろば線)に入ってしまう「奈良行」の列車もあり、間違って乗ってしまうと面倒なことになりますので、事前に列車の時刻を確認しておくことをおすすめします。
巨大交差点から町並みが始まる ~五條の町並みを歩いてみました~
JR和歌山線で五条駅へ
JR和歌山線や桜井線への乗換駅である王寺駅は、奈良県内でも最大級の巨大なターミナル駅です。
大阪と奈良とを結ぶ大和路快速が頻繁に停車して、JRの各路線や近鉄線、近隣のニュータウンへと向かうバス路線への乗り換え客を下ろします。
これから向かう五条駅へは、一時間に2~3本ほどの列車が出ています。
数年前までは、大昔に首都圏で使われていた旧式の通勤電車が使われていたJR和歌山線ですが、今は新型車両に変わっています。
とは言っても、朝夕以外は2両編成程度のワンマン列車ばかりなのは、今も変わらないようです。
和歌山線に乗り換えるときに気を付けないといけないのが、途中の高田駅から桜井線(万葉まほろば線)という別路線に入って、奈良まで行ってしまう列車があることです。
五条には行かないので、「奈良行き」には乗らないようにしましょう。
巨大な交差点から、新町通りへ。川沿いには、迷路のような路地も
奈良盆地の南端から山地に入り、王寺から一時間弱で五条駅に到着です。
駅正面の通りを南へ歩くとすぐに、町のメインストリート的な存在になっている、国道24号線にたどり着きます。
そこから24号線を西に進むと、五つの道が一堂に会している広い交差点に出ます。ここが、国道24号、168号、310号という主要な道路が分岐している「本陣交差点」です。この周辺が、古くからの町の中心部です。
街道の合流点として栄えた五條の町ですが、今でも変わらず交通の要衝なのが、よくわかる風景です。
五つの道のうち、南へ向かう国道168号を選んで少し歩くと、右手に非常に立派なお屋敷が見えてきます。これが国の重要文化財になっている栗山家住宅で、日本最古の古民家です。
さらに南に進み、「新町口」のT字路を西に入れば、そこからが新町通りの町並みです。
こちらは五條市の文化財となっている栗山家住宅と、その先にはお酒を入れる甕の形をした看板が目印の造り酒屋・山本本家、そして五條の町並みのシンボル的存在となっている「餅商一ツ橋」の看板が見えてきます。
この「餅商一ツ橋」、2018年に餅屋さんとしては閉店してしまったのですが、その後建物をそのまま使ってチョコレート屋さんとして再利用されています。「餅商」の看板もそのままというのが面白いですね。
「餅商」横の「鉄屋橋」を渡ると、あとはひたすら新町通りを西に向かって歩くだけです。古い町並みがずっと続いているので、迷うことはありません。
途中で、ついに開通せずに終わった国鉄五新線跡の立派な高架と交差するので、見逃さないようにしましょう。
なお、「鉄屋橋」を渡らずに川沿いに進み、迷路のような細い路地を抜けると、酒蔵が左右に並ぶ風景を見ることもできます。ここには蔵を利用したバーもあるようです。
ちょっと上級編の感じですが、こちらもぜひ歩いてみてください。
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