川中島の戦いの古戦場からも近い長野市の松代は、武田信玄が築いた城を前身とする松代城を中心とした城下町です。
城主となった真田氏が本格的に街づくりを行ったことで発展し、今でも「松代藩文武学校」などの真田氏による統治の名残が町の至るところに残されています。
城の南側の市街地には武家屋敷町が残り、立派な長屋門の前を江戸時代以来の水路が流れるという、趣のある風景が見られます。
また、古い町並みに近い象山に、軍部の大本営を移転させる目的で作られた、長大な地下壕が残ることでも知られています。
この記事では松代の町並みの見所や、実際にマイカーやバスなどで古い町並みを訪れるためのアクセス方法や駐車場について紹介しています。
実際に訪れた際の訪問記も掲載していますので、こちらも参考にしてみてください。
戦国の歴史の舞台となった、真田氏の城下町
真田氏による統治の名残が色濃く残る町
戦国の歴史の表舞台に立った場所
松代は北西側を流れる千曲川と、皆神山などの山々に周囲を囲まれた盆地のような場所にある城下町です。
現在では長野市の一部となっていますが、長野の中心市街地からは10キロ以上も離れていて、1960年代の合併から60年近く経った今でも独立した町の雰囲気があります。
有名な川中島の戦いの古戦場からも近く、武田信玄が上杉謙信との戦いに備えて築いた「海津城」が松代城の前身となっているなど、戦国時代の歴史の表舞台に立った町とも言えます。
江戸時代に入ると、松代城主となった真田氏が本格的に街づくりを行い、これが城下町としての発展につながりました。
真田氏による統治の名残は今でもこの町に色濃く残っていて、松代城はもちろん、「真田邸」「真田宝物館」「松代藩文武学校」など、真田氏に関連する史跡や施設などが町なかに多数見られます。
真田家所蔵の刀剣などが展示された宝物館や、藩校などが見学できる
「六文銭」の家紋で知られ、真田幸村を筆頭に歴史ファンには高い人気を誇る真田家ですが、「真田宝物館」ではその保有していた武具などの大名道具の展示によって、その歴史が詳しく解説されています。
真田氏の住まいであった「真田邸」と合わせて、真田ファンなら必ず訪れるべきでしょう。
真田信綱が用いたと言われる「青江の大太刀」(国の重要文化財)や幸村が使用したと伝えられる「大千鳥十文字槍」も展示されていて、刀剣類に興味がある人も必見です。
また、「松代藩文武学校」は、8代藩主の真田幸貫が発案して9代の幸教が完成させた藩校で、1855年の開校当時の建物がそのまま現存しているという貴重なもの。国の史跡にも指定されています。
剣術所や弓術所など、内部が公開されているので、こちらもぜひ見学してみることをおすすめします。
江戸時代の水路が残る、貴重な武家屋敷町
松代城南側一帯の市街地には、城下町の雰囲気がはっきりと残っています。
城のすぐ近く、真田邸や旧白井家などがある殿町や清州町の辺りは、主に上級武士の屋敷があった区域で、広い通りに沿って塀や門が続く風景は、武家屋敷町らしく整ったものとなっています。
「真田宝物館」や「松代藩文武学校」があるのもこの区域です。
北国街道沿いの紺屋町などの町人町を超えてさらに南側、象山神社周辺の代官町や竹山町、馬場町の辺りは中・下級武士が住んだ区域で、江戸時代から続くという水路が今も残り、町なかの至る所に格子状に張り巡らされています。
象山に近い「山寺常山邸」では、松代でも最大級という長屋門のすぐ前を水路が流れていて、他にも旧恩田重信家付近などあちこちで、同じような涼しげな風景が見られます。
この水路の水が、それぞれの屋敷の庭にも引き入れられているというのが松代城下町の特徴で、その水を貯える「泉水」と呼ばれる池が、今でもいくつもの武家屋敷に残っています。
このような貴重な景観が守られてきたことから、この一帯は長野市の「伝統環境保存区域」となっていて、保存のための努力が続けられています。
「松代大本営」と呼ばれる象山地下壕も見ておきたい
城下町の南側、象山の麓に戦時中に造られた地下壕を見学できる場所があります。
いわゆる「松代大本営」と呼ばれる非常に大規模なもので、全長10キロにも渡る地下トンネルが続いています。
突貫工事のため内部は素掘りで、夏でも寒いくらいに涼しく、まるで洞窟のようです。
その名の通り、日本軍の大本営を移して最後まで戦争を続けるという目的で作られた場所で、非常に貴重な戦争の遺跡となっています。
山寺常山邸などの古い町並みの辺りからも歩いてすぐなので、ぜひ訪れてみましょう。
アクセス方法
マイカー利用の場合
長野インターを降りてからすぐ近く
群馬と新潟を結ぶ上信越自動車道の長野インターが、町のすぐそばにあります。
松代の市街地までは2~3キロくらいで、インターを降りてから5分程度しかかかりません。
長野市中心部までは10キロほどあるので、むしろ「松代インター」という名前で良かったんじゃないかという感じがしてくるほどですが、ここは長野市中心部方面への玄関口ともなっているようです。
なお、中央道と接続する長野自動車道も、この長野インターのすぐ西側(更埴ジャンクション)で上信越道に合流しているため、関東方面からも東海・関西方面からもアクセスのよいインターチェンジとなっています。
無料の観光用駐車場がいくつもある
城下町の各所に無料の観光駐車場がいくつもあり、
・「殿町無料観光駐車場」(40台駐車可能)
・「松代城無料駐車場」(30台駐車可能)
・「松代代官山駐車場(象山東駐車場)」(7台程度駐車可能)
などとなっています。これなら、駐車の心配はまず不要ですね。
鉄道・バス利用の場合
比較的最近の2012年まで、長野電鉄屋代線の松代駅が城のすぐそばに存在していたのですが、残念ながら廃線となってしまいました(駅舎は保存されています)
現在では、JR長野駅から発着するアルピコ交通の路線バス(30系統松代線)が、約30分ほどで旧松代駅との間を結んでいます。
20~30分に1本くらいの割合で便数があるので、比較的便利と言って良いでしょう。
料金は片道660円です(2023年7月現在)
https://www.alpico.co.jp/traffic/local/nagano/matsushiro/
(アルピコ交通公式サイト)
真夏の武家屋敷町と通り雨 ~松代城下町訪問記~
涼しげな水路を眺める、炎天下の城下町
7月の終わり、梅雨明けで炎天下の中央自動車道と長野道を走ること数時間。ようやく松代の町に近い長野インターにたどり着きました。
インターの名前でも分かるように長野市の一部である松代ですが、善光寺の門前町である長野としては全く別の町という感じで、盆地のような地形を見ても独立した城下町という形になっています。
松代城の近くにも駐車場はあるのですが、町の南側にある「松代大本営」にも行きたかったので、象山に近い「松代代官町駐車場」に車を停めて町歩きを始めます。
この代官町の辺りは、中・下級武士が住んだという武家屋敷町で、長野市の「伝統環境保存区域」に指定されているようでした。
水路がいくつも流れているのが景観の特徴なのですが、この水路は江戸時代から続く貴重なものらしく、白壁の塀の前を水が流れる様子はいかにも涼しげで風情がありました。
とは言っても、実際の気温はかなり高くて、歩いていると汗だくです。
信州というと爽やかな高原みたいなイメージがありますが、当たり前ながら真夏は相当暑くなります。
見学と雨宿り、一石二鳥の「文武学校」
立派な長屋門が残る山寺常山邸を見てから、水路に沿うように通りを北上し、象山神社を過ぎてさらに歩いて行くと、旧白井家表門の辺りで急に通りが広々としてきて、風景が変わってきます。
この一帯が上級武士が住んだ殿町や清州町で、いかにも城下町らしく端正に整った景観が見られるエリアです。
「真田宝物館」「真田邸」「松代藩文武学校」といった真田家関連の観光スポットもこの辺りに集まっていて、まさに松代観光の中心地という感じです。真田ファンにとっては聖地の一つかも知れません。
ここまで歩いてきたときに、ちょうど夏の通り雨が激しく降って来ました。目の前の「文武学校」に逃げ込んで、見学しながら雨宿りをします。
みんなで江戸時代に造られた立派な学問所の縁側に座って、降りしきる雨を眺めているのも、なかなか趣があって良いものでした。
間もなく雨が上がると、いくらか涼しくなった城下町の通りの上に、再び夏の青空がのぞいていました。
地下要塞、松代大本営で涼む
さて、同行したメンバーが実は楽しみにしていたのが、「松代大本営」として知られる象山地下壕でした。
今までにも和歌山・友が島などの要塞や、各地の鉱山の地下坑道などもみんなで見学に行っていて、地下要塞として名高い松代の大本営も押さえておかないと、という感じだったのでした。
入口でヘルメットを装着し、いよいよ暗い地下へと降りていきます。雰囲気的には丸っきり、洞窟探検といったところです。
しかし、いざ中のほうへと進んでいくと、やはり鉱山のトンネルなどと比べて空間が広い感じで、なるほど要塞として造ろうとしたのだなと実感できました。
入口の案内図を見ると、よくもまあこれだけの規模のものを本気で作ろうとしたものだなと感心してしまいます。
それにしても涼しい! 半袖だとちょっと寒いくらいの気温で、炎天下の外とは大違い。一息つくことができた感じでした。
もっとも、再び地上に戻った時、あまりの暑さで倒れそうになってしまったことは、言うまでもありません。
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