登米町の古い町並みを歩いてみよう ~洋風建築と城下町の「明治村」~(宮城県)

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城下町・武家町北日本エリア

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 宮城県の北部にある登米(とよま)町は、北上川の水運などで発展した城下町です。
 明治時代の初めには「水沢県」の県庁が置かれるなど、地域の中心となっていましたが、主要な交通ルートから外れたことでその地位を失いました。 

 しかし、そんな繁栄の歴史を伝えるように、この町には当時建設された小学校などの洋風建築が現存し、城下町らしい武家屋敷町の風景も見られます。
 そのため、登米町は「みやぎの明治村」とも呼ばれて、人気の観光地となっています。 

 この記事では登米町の町並みの見所や、実際にマイカーやバスなどで古い町並みを訪れるためのアクセス方法や駐車場について紹介しています。
 実際に訪れた際の訪問記も掲載していますので、こちらも参考にしてみてください。

近代洋風建築と城下町の風情が同居する「みやぎの明治村」

明治の初めには県庁も置かれた、地域の中心

「旧登米高等尋常小学校」正面バルコニ
「旧登米高等尋常小学校」正面バルコニー(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

明治期の繁栄の名残を残す町

 宮城県の北部、岩手との県境に接する場所にある登米(とめ)市の登米(とよま)町は、古くからこの地域の中心だった城下町です。
 北上川に隣接した町ということで、江戸時代には水運によって運ばれた米穀が集まる拠点として大きく発展しました。
 明治の初めに「水沢県」(県域が現在の宮城県と岩手県にまたがっていた)が設置された時は、その県庁が置かれることにもなりましたが、その後は東北本線などの主要な交通ルートから外れてしまい、地域の中心としての地位を失うことになりました。
 
 しかし、そんな明治期の発展を今に伝えるように、この町には当時建設された小学校や警察署の洋風建築などが現存し、「水沢県庁」として使われていた建物もちゃんと保存されています。
 このような特徴から、この町は「みやぎの明治村」とも呼ばれていて、観光地としても人気となっています。 

「登米(とめ)市」と「登米(とよま)町」の違いに気を付けよう

 市の名前が「とめ」なのに、町としては「とよま」なのは、歴史的な経過によるもののようです。
 地元としては「とよま」を町の名前として認識していたのですが、国や県の側は「とめ」を登米郡の正式な読み方に定めてしまい、しかも合併で登米市ができたときに「とめ」のほうを採用したためにこういう状況になっています。

 さらにややこしいことに、登米(とめ)市の中心で市役所などがあるのは旧佐沼町で、「明治村」のほうの旧登米(とよま)町とは数キロ離れている町なので、訪れる時は注意が必要です。
(単純に「登米市」で行き先を設定すると、佐沼に到着することになるかもしれません

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仙台藩の「要害」の置かれた城下町

登米・前小路(武家屋敷通り)の風景
前小路(武家屋敷通り)の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 江戸時代の登米町には、仙台藩の支城に当たる「要害」が置かれ、城下町としての発展を見せました。
 現在でも町の中心には武家屋敷町が残っていて、通りに沿って塀が続く、城下町らしい風情が感じられる風景が見られます。
 前小路や後小路などの通りが縦横に格子状になっている町の形も、城下町の当時から大きく変わっていないとのことです。

 江戸時代に建てられた藩士の屋敷が「春蘭亭」という施設として開放されていて、内部を見学したり、喫茶コーナーでゆっくりすることもできます。

 町のすぐ近くを流れる北上川の水運でも発展したことから、川に近い武家屋敷街の東側を中心にヤマカノ醸造商蔵や海老喜旧店舗(「蔵の資料館」)などの蔵造りの商家も残されていて、いくつもの異なった面を見ることができる町となっています。

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登米・春蘭亭(旧鈴木家住宅)
春蘭亭(旧鈴木家住宅)(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)
旬蘭亭内部
登米・旧山田本店(ヤマカノ醸造)商蔵
旧山田本店(ヤマカノ醸造)商蔵(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

「みやぎの明治村」のシンボルとなる建築物

旧登米高等尋常小学校
旧登米高等尋常小学校(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

「みやぎの明治村」のシンボルとでもいうべき建物が、国の重要文化財ともなっている「旧登米高等尋常小学校」(現在は「教育資料館」)です。
 東西40メートルにも渡るコの字型の建物で、正面部分には立派なポーチとバルコニーがあるという、ちょっと驚くほど立派な造りです。
 内部は、小学校当時の様子を再現した展示などが行われていて、懐かしいような気分が味わえます。

 また、この小学校と同じ設計者による「旧登米警察署」(現在は警察資料館)も、規模は小さめながらやはり正面に立派なバルコニーがあるなど共通したところのある造りで、こちらも町のシンボルとなっています。
 内部の展示も、警察関連の昔の資料や実物の宮城県警のパトカー(80年代の日産スカイライン)や白バイなど貴重なものばかりで、かなり見ごたえがあります。

旧登米警察署
旧登米警察署(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 他にも、前述の「水沢県庁」の建物が現存していて、こちらは玄関部分は日本建築、本棟は洋風の平屋という和洋折衷の造りが特徴となっています。
 県庁としての役目が終わってからは裁判所としても使われていたのですが、内部はその当時の資料を基に復元されています。

旧水沢県庁(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

アクセス方法

旧登米高等尋常小学校正門
旧登米高等尋常小学校正門(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

マイカー利用の場合

三陸自動車道の登米インターが近い

 仙台市内から岩手県の宮古市までを結ぶ三陸自動車道の登米インターチェンジが町から3キロほど離れた場所にあり、インターを降りてから約5分程度とアクセスは良好です。

 また、東北自動車道の築館インターから三陸道の登米インターまでの間に「みやぎ県北高速幹線道路」という無料のバイパスが完成しているため(2021年全通)、こちらのルートでも東北自動車道を降りてから30分程度で到着することができます。
 
 どちらのルートでも、東京方面からの所要時間にそれほど大きな差はなさそうですが、三陸道経由のほうがトータルの距離が短く、少し早めに到着できるようです。
 高速料金はわずかに(数百円程度)築館インター経由のほうが安くなります。

登米インターからのルート

東北自動車道築館インターからバイパス経由のルート

町並みに隣接する、無料の観光駐車場が利用できる

「旧登米高等尋常小学校」(教育資料館)に隣接するとよま観光物産センターに、観光駐車場があります。料金は無料で、50台ほどが駐車できます。
 非常に便利な場所で、駐車場については全く悩む必要がなさそうです。

バス利用の場合

 現在の登米町には、鉄道は通っていません(1968年までは、東北本線の瀬峰駅との間を結ぶ仙北鉄道登米線がありました。この時代に廃止された地方鉄道多いですね)。
 しかし、仙台駅との間に高速バスが運行されているので、そちらを利用することができます。
 本数は1日7往復、所要時間は約1時間半ほどで、料金は片道1300円となっています(県庁市役所前~とよま総合支所間、2023年7月現在)

https://higashinippon.co.jp/highway/toyoma.html
(東日本急行株式会社の公式サイト)
 

目当ては洋風建築と地元グルメ ~登米の明治村を観光する~

武家屋敷と洋風建築、そしてなぜか5代目日産スカイライン

「みやぎの明治村」とも呼ばれる登米町は、蔵の町として知られる小京都の村田町と並んで、宮城県に来たらぜひ立ち寄りたいと思っていた場所でした。
 2泊3日の旅行でどちらも訪れることになったのですが、宮城の名湯として知られる鳴子温泉にも泊まりたかったし、城下町の白石や、もう一つの宮城の小京都である岩出山にも立ち寄って、などとやっていると詰め込み気味の日程になってしまいました。

 そういうわけで、登米町を訪れた当日は、宿泊地の鳴子温泉(「ホテル亀屋[PR]楽天トラベル)を朝から出発して直行ということになりました。60キロ程度の距離ですが、まだみやぎ県北高速幹線道路も全通しておらず、ほとんど一般道経由になるので少々時間がかかってしまいました。
 登米がメインなら、もう少し近い場所に宿泊するほうが良いだろうと思います。
 鳴子温泉も温泉町の風情があってよかったですけどね。

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登米・前小路(武家屋敷通り)の風景
前小路(武家屋敷通り)の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 さて、こうして到着した登米、写真などでよく見かける近代洋風建築のイメージが強かったのですが、実際に歩いてみると城下町としての雰囲気が強く感じられました。
 前小路の辺りなど、白壁に下見板の塀が続く様子が見事に武家屋敷町の風景で、ちょっと意外に思えたほどでした。
 通りが縦横の格子状に走る、北上川沿いの市街地の形も昔のままのようです。

 登米の洋風建築を代表する2つの建物、「旧登米高等尋常小学校」と「旧登米警察署」は、それぞれ旧市街地の北西側と南東側にあります。
 その間を行き来すれば、自然に武家屋敷町や蔵造りの商家も見て回ることになりました。

洋風建築と蔵造りの商家が残る、登米の町並み
洋風建築と蔵造りの商家が残る、登米の町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

「旧登米高等尋常小学校」の建物は、よくもこれだけ立派なものを建てて、しかも今まで残せたなと感嘆するレベルのもの。国の重要文化財になっているのも当然で、この建物を見るためだけでも登米まで行く価値があるかも知れません。
 同じ設計者によるという「旧登米警察署」も、いくらか小ぶりながら、やはり立派なバルコニーなどのある素晴らしい建物でした。
 こちらが面白かったのは、中の展示。現在は「警察資料館」として使われているのですが、昔の警察関係の資料というものが貴重で興味深い上に、かつて使われていたパトカーの実物まで展示されています。
 それも80年代の日産スカイライン、というかつての大人気車で、これを見た時は同行メンバー一同大喜び。それぞれ運転席に座って、記念写真撮影ということになりました。

「旧登米警察署」(警察資料館)に展示されている5代目スカイライン(C210系)のパトカー
「旧登米警察署」(警察資料館)に展示されている5代目スカイライン(C210系)のパトカー

目当ての地元グルメ、「油麩丼」と「はっと汁」

 さて、ここまでは町並みや建物の話でしたが、登米町にやってくるにあたってはもう一つの目当てがあり、それが地元グルメの「油麩丼」と「はっと汁」でした。
 幸い、観光駐車場の目の前に大衆食堂(「つか勇」さん)があったので到着してすぐに食べることができました。

 登米名物の「油麩丼」はその名の通り油麩を使った丼で、カツ丼のカツを油麩に変えたものという感じです。
 ちょっとしつこいかもと思っていたらそんなことは全然なくて、出し汁をたっぷり含んだ油麩と卵がとろけ合うようで相性が大変良く、お肉ではなく植物性たんぱくの麩を使っていることから、むしろヘルシーな感じもしました。

「はっと汁」のほうは宮城県北全般で食べられているようですが、小麦粉を薄く伸ばした「はっと」を人参、ごぼう、じゃがいもと一緒に入れた汁物で、素朴な味ですがこちらもだしが効いて大変美味しかったです。
 登米町ではこちらにも油麩を入れるということで、この二つをセットにしたランチは、まさに油麩ずくしという感じになったのでした。
 また訪れることがあったら、間違いなくまた食べるだろうと思います。

油麩丼とはっと汁

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