旧中山道に沿って漆器店が建ち並ぶ「漆工町」、木曽平沢。400年以上の歴史を持つ木曽漆器の産地で、奈良井宿に隣接する宿場町だったことでも知られています。
漆器店の古い家屋が数多く残り、重伝建地区にも選定されている木曽平沢の町並みを歩いてみましょう。
この記事では、木曽平沢の町並みの見どころや、実際に訪れるための交通ルートや駐車場の場所などについて紹介しています。
また、実際に訪問した時の訪問記も掲載しているので、こちらもこの町を歩きに行くときの参考にしていただければと思います。
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旧中山道の宿場町でもあった、「木曽漆器」の生産地
街道に沿って漆器店が建ち並ぶ「漆工町」
長野県の中部、中山道を塩尻宿から10キロほど南下した辺りにあるのが、木曽平沢(長野県塩尻市)の町並みです。
400年以上の歴史を有すると言われる「木曽漆器」の生産地で、本通りとも呼ばれる旧中山道の両側にはいくつもの漆器店が建ち並び、その西側に並行する金西町は漆器職人の住む職工町となっています。
元々は、木曽の山林で育った木材を用いた木工細工が盛んだったのですが、冷涼な気候が漆を塗る作業に向いているということもあって、漆器の生産が行われるようになりました。
漆を塗ることで白木よりも耐久性が増し、普段使いとして長く使えるという丈夫さが評判となって、木曽漆器の名前は全国に知りわたることになります。
平沢における漆器の生産量は現在でも日本有数で、生産と販売が一体となって繁栄した町と言えます。
古い家屋の数も大変に多く、国の重要的建造物群保存地区(重伝建地区)にも選定されています。
それらの多くが旧中山道沿いと、その西側に並行する金西町の街路に集まっていて、歴史的な建造物が今でも漆器店の店舗として現役という場合も多いのです。
隣接する奈良井宿を補完する「間の宿」(枝郷)でもあった
隣接する宿場町、「奈良井千軒」とも呼ばれるほど繫栄した奈良井宿からは、旧中山道を歩いてわずか1.5キロほどの距離です。
同じ中山道沿いの集落とはいえ、木曾平沢は中山道六十九次の中には入っていませんが、この町は「間の宿」としての役目も持っていて、奈良井宿を補完していた(枝郷)町でした。
宿場町を思わせるような風景が見られるのは、このためかも知れません。出桁造りが多く見られる街並みの景観も、奈良井宿と共通する部分がありますね。
木曽漆器祭りも開催される
木曽平沢には、今でも数十もの漆器店が集まっています。
毎年6月の上旬(第1金曜日から3日間)には「木曽漆器祭」も開催され、通りにはずらりと漆器が展示されます。
庶民にも比較的手に入れやすいということで、江戸時代には土産物として人気だったという木曽漆器。
現代においては、漆器は高級品ということになりますが、艶と透明感のある独特の深い色合いは非常に魅力的で、やはり憧れますね。
アクセス方法
マイカー利用の場合
高速道路はないが、国道19号がすぐそばを通る
長野県南部エリアの最も主要な高速道路である中央自動車道は、東側の伊那谷を通過しており、木曾平沢がある木曽谷には高速道路はありません。
その代わりに、中津川方面と塩尻方面とを結ぶ幹線道路である国道19号が、町のすぐそばを通っています。
中央自動車道の伊那インターから国道361号権兵衛トンネルを経由するか、長野自動車道の塩尻インターから国道19号を南下するかのルートになるでしょう。
どちらも、約30分程度で到着するようです。
「うるしの里広場」の駐車場が利用可能
駐車場としては、「うるしの里広場」の駐車場が利用可能です。
ここには「木曽漆器館」という施設もあり、木曽漆器の製作工程なども展示されています。
町並みの中心部までは600メートル徒歩6分ほどですが、途中で奈良井川の風景を眺めたりすることもできる高台の道で、気持ちの良い散策コースになっています。
鉄道で行く場合 ~駅が町の中心にあって便利~
木曽平沢の町並みが便利なのは、町のほぼ中心部にJR中央本線の木曽平沢駅があることです。
駅を降りれば、ほぼ目の前に中山道が通っているため、すぐに町歩きを始めることができます。
特急は停車しませんが(木曽漆器祭りの期間だけは一部停車)、各駅停車でも「あずさ」が停車する塩尻駅から約20分ほど、名古屋方面からの場合は特急「しなの」が停車する木曽福島駅から25分ほどとなっているので、乗り換えてもそれほど時間はかかりません。
なお、列車の本数は1~2時間に1本というところで、それほど多くはありません。
訪れる際は、必ず時刻表や乗り換えアプリで確認しておきましょう。
真夏の中山道を歩く ~木曾平沢、それから奈良井宿へ~
木曽平沢を訪れたのは8月上旬のことで、まさに真夏の暑さの日でした。
前日は長野市内に泊り、その日は朝から車で白馬村の青鬼集落へ。
中二階の正面だけ屋根を切り取ったような「かぶと造り」の屋根が特徴的な民家が残る集落で、巨大な民家がいくつも建ち並んでいる風景には驚かされました。
それから長野市内に戻り、善光寺の門前町を歩いてから、今度はJRの特急しなので塩尻へ。
塩尻から中央本線の各駅停車で木曽平沢駅に到着したときは、すでに陽が傾き始めていました。なかなかの強行日程です。
幸い、古い町並みがある旧中山道は駅からすぐ近く。
歴史のある町では町の外れに駅があるという場合も多いのですが、平沢の場合は町の中心部が駅の目の前です。
町を見下ろす高台にある駅から坂道を下って旧中山道に出ると、もう漆器店が並ぶ古い町並みの真ん中という感じでした。これは、観光には便利です。
もっとも、町の北端から南端までは一キロほどはあるので、全部往復するとやはりちょっとした距離を歩くことにはなります。
重伝建地区ということで、歴史的建造物の漆器店が並ぶ町並みの保存度合いも高く、写真を撮るのも楽しかったです。
この時は、続いて奈良井宿も訪れるつもりでした。
再び鉄道に乗っての移動も可能だったのですが、奈良井駅まではわずか1駅、距離も2キロ以下と大したことがないので、こうなったらついでだと奈良井川沿いに歩いてみることにしました。
午後4時半くらいに歩き始めて、奈良井宿に到着したのは午後5時前。
たった30分ですが、中山道を次の宿場まで実際に歩いてみるのは、なかなか楽しい経験でした。川沿いの道は眺めも良くて、歩いていて飽きることもなかったです。
もっとも、なにせ熱いので歩いていた時はまさに汗だくで、途中で何度も休憩して水分を補給したり、帽子もなかったので頭から水をかぶったりしてました(それで30分もかかった)
真夏の町並み散策は、熱中症に気を付けましょう。
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