上下の古い町並みを歩いてみよう ~キリスト教会がシンボルの峠の町~(広島県)

宿場町
宿場町天領山陽エリア

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 上下は、日本海側の石見銀山へと向かうメインルートで、銀山街道とも呼ばれた石州街道の宿場町。
 日本海側と、瀬戸内海側の分水嶺に位置する町というのが地名の由来で、まさに峠の町です。
 天領として代官所が置かれ、石見銀山で産出された銀の運用を行う拠点となったことから、金融業で非常に栄えることになりました。

 かつての街道筋に沿って白壁・なまこ壁の重厚な商家が残り、蔵を改装したキリスト教会の塔がランドマークになっていたりもします。

 この記事では、そんな上下の古い町並みの見所や、マイカーや鉄道で訪れる場合のルートや駐車場などについて紹介しています。
 実際に訪れてみた際の訪問記も掲載しているので、参考にしてみてください。 

石見銀山で産出された銀の運用で栄えた、天領の町

銀山街道とも呼ばれた石州街道の宿場町

広島県上下の町並み
上下の町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 上下(広島県府中市)は、山陽と山陰を結んだ石州街道の宿場町です。石州街道は日本海側の石見銀山へと向かうメインルートで、銀山街道とも呼ばれました。

 中国山地の山中、上下川沿いの小さな盆地に市街地が広がります。 
「上下」という地名は非常に珍しい感じですが、日本海へと流れる江の川水系と、瀬戸内海へ向かう芦田川水系の分水嶺に位置する町というのがその名の由来で、まさに峠の町というわけです。

 江戸時代には天領として幕府の管轄下に置かれ、「上下代官所」が設置されました。
 この代官所は石見銀山を管理する大森代官所の支所的な位置づけで、産出された銀の運用を上下の商人が行うことになったため、この町は金融業によって非常に栄えることになりました。

 旧石州街道(「石見銀山街道」)のメインストリートに沿って現在も残る大規模な歴史的町並みが、その繁栄ぶりを今に伝えています。

上下キリスト教会の塔が目印の、「白壁の道」

上下町商店街「白壁の道」の風景
上下町商店街「白壁の道」の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 この町のランドマーク的な存在になっているのが、旧角倉家の蔵を改築して作られたという上下キリスト教会の展望塔です。
 重厚な蔵の瓦屋根の上に西洋風の塔が建っている様子は、非常に目を惹きます。

 また、明治時代の警察署の建物も現存し、その屋根の上に残る当時のままの火の見やぐらも、同じく町のシンボルの一つとなっています。
 こちらは文豪・田山花袋が記した紀行文の中でも触れられているということです。

上下「旧警察署」周辺の町並み
火の見やぐらが残る「旧警察署」周辺の町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 上下キリスト教会の周囲(上下町商店街)は「白壁の道」と呼ばれていて、今でも町のメインストリートとなっているかつての石州街道に沿って、伝統的な白壁・なまこ壁の重厚な商家が数多く建ち並んでいます。

 ほとんど一直線の通りに続く古い町並み、それにキリスト教会の塔の組み合わせが作り出す景観は非常に見事なものだと言ってよいでしょう。

大正時代に建てられた芝居小屋、「翁座」

上下「翁座」の風景
上下「翁座」の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 さらにもう一つ、上下の町のシンボル的な存在となっているのが、大正14年に完成した芝居小屋の「翁座」。木造の芝居小屋としては、中国地方で唯一の現存とのことです。
 古い町並みが残る通りの突き当りに、大きな瓦屋根の2階建ての木造建築が建っている姿はかなり印象的で、やはりこの町が栄えていた頃の様子が想像できます。

 歌舞伎の上演を目的に建造されましたが、後には映画館としても使用されたようで「映画実演」という看板が上がっています。

 内部は公開されていて、土日祝日に限って見学が可能です。
 回り舞台や奈落、桟敷席や花道などが保存されているその様子は、やはり必見と言えます。 

上下「翁座」の内部

アクセス方法

マイカー・レンタカー利用の場合

尾道自動車道から15キロほど

 山陽自動車道が走る尾道と、中国道が通る三次や庄原の中間あたりに位置する町で、アクセスが便利とは言えませんでしたが、尾道と三好を結ぶ尾道自動車道(無料)が開通したことで状況が改善されました。

 現在では尾道道の世羅インターチェンジから国道432号経由で14キロ弱、約20分ほどで到着することができます。 
 また、三次方面からの場合は、甲奴インターから県道424号などを経由して約8キロ、10分ほどで到着です。

無料の観光駐車場が利用できる

「白壁の道」から上下川を渡った北側に、無料の「白壁観光駐車場」(50台駐車可能)があります。
 石州街道までは徒歩数分ほどで、便利です。

鉄道・バス利用の場合

 山陽新幹線(のぞみ)が停まる福山駅と広島県北部の拠点である三次駅を結ぶ、JR福塩線の上下駅が町の玄関口となっています。

 福山からは1時間半くらいですが、ただし福塩線は府中以北の本数が非常に少なくて、福山・上下間はなんと1日にわずか5本しか列車がありません(2023年1月現在。運賃は990円)。
 駅から町並みまでは近いのですが、鉄道利用には注意が必要です。

 広島市のバスセンターからは、「ピースライナー」という高速バスもあります。
 こちらも1日に4本ですが、朝8時から午後6時までと、比較的利用しやすい時間に便が集まっています。
 運賃は片道2,600円、所要時間は約2時間です(2023年1月現在)。

https://www.hiroko-group.co.jp/kotsu/kousoku/peace/jikoku.htm
(広島交通「ピースライナー」の時刻表)

町のシンボルを見て歩く ~上下の町を訪れてみました~

石見銀山街道を辿るように、県道を走る

 峠の町、分水嶺の町だから「上下」、という地名には非常に惹かれるものがあって、一度行ってみたいとは思っていたのですが、高速道路からも離れた広島県の山中ということで、なかなか立ち寄る機会がありませんでした。

 実際に訪れることになったのは、二回目の鞆へ出かけたその翌日でした。
 福山駅前のホテルで、明日は神辺宿か府中の町並みでも見に行こうかと地図を見ているうち、いっそこの際上下まで行ってそのまま三次で中国道に出てしまえ、と思って車を走らせることにしたのでした。
(神辺と府中は後日改めて行きました)

 福山から上下まで、すべて一般道を走って50キロほど。
 まずは、なぜか「ロマンチック街道」の名前がついている国道313号を北上。途中で、たまたま見かけた横尾の町並みに少し立ち寄ったりもしました。

福山市横尾の町並み、ただしほとんど取り壊されて現存せず

 そこから府中の市街地を西に抜けて、広島県道24号府中上下線で山地を超えました。
 この県道24号線は、かつての石州街道(石見銀山街道)に近いルートを走っているので、上下の町を訪れるに当たっては正統派のコースとも言えます。

歴史の重層性を伝える建造物群

 いかにも町の玄関口という趣のあるJR上下駅を見てから車を停めて、いよいよ町並みの散策を開始。
 町のシンボルになっている教会の塔というものがあることは知っていたので、まずはそれが見たいと石見銀山街道の商店街を歩いて行きます。
 道沿いに残る白壁・なまこ壁の蔵造りの商家が、想像していたよりもずっと立派で、数も多いことに嬉しくなりました。

JR上下駅

 目当ての上下キリスト教会も、思っていた以上に蔵そのまんま。
 明治時代の蔵を昭和5年に教会として改築したとのことですが、瓦屋根の上に洋風の塔と十字架が立っている様子には擬洋風的な趣もありました。
 このような建物は、繁栄した時代を知る町に特有の、歴史の重層性を感じさせて良いものです。

 最後にもう一つの町のシンボル、木造の芝居小屋である「翁座」へ。一時は工場として使われていたこともあるようですが、今はちゃんと華やかな様子が復元されていて観劇客でにぎわった時代が想像できます。
 このような大きな芝居小屋というのはなかなかありませんから、周辺の地域からもたくさんのお客さんが集まったのかもしれません。
 これからも大切に守って行って欲しいと思いました。

上下町「白壁の道」の風景
「白壁の道」の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

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