吹屋銅山から産出されるベンガラの出荷地として、江戸時代から明治時代にかけて繁栄したのが「吹屋ふるさと村」とも呼ばれる吹屋集落です。
山あいの集落とは思えないほどの発展ぶりで、ゆるやかな坂道に沿って古い家屋が建ち並ぶ、見事な景観が今でも残ります。
特徴的なのは、その家屋の多くに石州瓦とベンガラが用いられていることから「赤い町並み」となっていることで、これは他では目にすることができません。
この記事では吹屋の町並みの見どころや、町を訪れるためのルートや駐車場の場所、バス路線などについて紹介しています。
また、実際に吹屋を訪問した時の訪問記も掲載しているので、こちらも町歩きの参考になると思います。ぜひ読んでみてください。
ベンガラの産地として栄えた、「赤い町並み」
ゆるやかな坂道に沿って、町並みが続く
岡山県西端近くの山間地に位置する吹屋集落(岡山県高梁市)は、吉岡鉱山(吹屋銅山)から産出されるベンガラ(弁柄)の出荷地として、江戸時代から明治時代にかけて繁栄した場所です。
その重要性から、幕府の天領として代官所が置かれていました。
ベンガラは赤褐色の顔料で陶器や漆器の着色に使われたり、主に西日本では木造家屋の塗装に使われたりしました。
幕末から明治にかけての時代、ベンガラを産したのは日本で唯一吹屋だけだったということで、その貴重さゆえに山あいの集落とは思えないほどの大発展を遂げました。
その町並みは現代まで生き残ることになり、ゆるやかな坂道に沿って歴史的建造物がずらりと建ち並ぶ見事な景観が残ることから、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)にも選定されています。
一帯は「吹屋ふるさと村」とも呼ばれていて、ベンガラ業を営んだ片山家の総支配人の住宅が、「吹屋ふるさと村郷土館」として公開されています。
他では見られない「赤い町並み」が特徴的
吹屋の町並みが特徴的なのは、単に古い家屋が多いというだけではなく、その多くが屋根には石州瓦を使い、窓や戸の格子部分や漆喰などにもベンガラが使われた「赤い家屋」で統一されていること。
写真だと、どうしても赤色の鮮やかさが強調されてしまったりはするのですが、現地で実際にこの景観を見ても、やはり他では見たことのないインパクトが感じられると思います。
特産物であるベンガラを使うのは分かりますが、屋根までが島根の石州瓦なのは、雪や低温に強いという石州瓦の長所がこの町の気候に合っていたからのようです。
(恐らくは、「赤色で統一しよう」という気持ちもあったのじゃないかと想像してますが)
ただし、石見の産地から取り寄せるのではなく、現地から瓦職人を呼んできてここで瓦を作ってもらったそうで、この町の富があってこそ、このような贅沢ができたようですね。
https://www.sekisyu-kawara.jp/howto/machinami/tanbo/bicchufukiya/index.html
(出典:石州瓦工業組合サイト)
吉岡鉱山跡(笹畝坑道)の見学もできます
吹屋の集落から1キロちょっとの場所には、吉岡鉱山(吹屋銅山)の笹畝坑道跡を見学できる施設もあります。
江戸から大正時代にかけて操業していた銅山で、洞窟のような地下の坑道を300メートルに渡って実際に歩くことができて、ちょっとした探検気分を味わうことができると思います。
また、その近くにはベンガラ工場の跡を利用した「ベンガラ館」という施設もあって、ベンガラの製造工程を見学することもできます。
こちらも併せて訪れてみたいですね。
アクセス方法
マイカー・レンタカー利用の場合
最寄りの高速道路のインターからは、20~30キロ程度の距離
中国山地の山中にある集落なので、マイカーなどで訪れるのが現実的ということになります。
近くを走っている高速道路は中国自動車道か岡山自動車道ですが、どちらも20キロ以上離れています。
中国道利用の場合は新見インターから 県道33号を利用して20キロ少し、30分ちょっとで到着することができます。
岡山道からの場合は賀陽インター利用で県道85号などを経由して30キロ少し、40分ちょっとかかります。
県道85号線は所々で一車線の道幅しかない区間などもあって、走行困難とまではいかないものの、少し時間がかかってしまうかもしれませんね。
広大な駐車場が二か所ある
町並みの残る坂道を挟んで、坂の上側の「千枚駐車場」と下側の「下町駐車場」があります。
どちらも無料で、駐車台数も十分に確保されているため、その点で困ることはないでしょう。
特に「下町駐車場」のほうはかなり広大なのですが、町並みの中心部により近いのは「千枚駐車場」のほうとなっています。
どちらを選んでも不便はありませんが、天候などに合わせて利用するのが良いでしょう。
レンタカー比較といえば、たびらいレンタカー
鉄道とバスで行く場合
最寄り駅はJR伯備線の備中川面駅ということになるようですが、20キロ近い距離があるため、鉄道利用はほぼ考えられないと言えるでしょう。
現実的には、高梁市の中心駅である備中高梁駅(バスセンター併設)から吹屋行きの路線バスに乗ることになると思います。
備中高梁から吹屋までは約1時間、一日3本のバスが出ているようです。
https://sites.google.com/site/fukiyakankou/akusesu
(高梁市観光協会サイト)
なお、この路線は紀行作家・宮脇俊三氏の「ローカルバスの終点へ」でも紹介されており、かなりの歴史がある路線のようです。
もちろん吹屋の町並みの様子も紹介されていますが、他の「終点」もみんな魅力的で、非常におすすめの名著です。
赤い屋根の続く坂道 ~吹屋の町並みを歩いてみました~
岡山県を通りがかったついでに立ち寄ることも
圧倒的な保存状態を誇る町並みということで、何度も訪れているのが吹屋です。いずれも車を使っての訪問で、バス路線を利用したことはまだありません。
一見不便そうにも見える場所ですが、山陽自動車道の岡山インターからでも岡山道経由で1時間ちょっとくらい、中国自動車道の新見インターからだと30分くらいなので、岡山県内を通りがかった際についでに立ち寄ることも十分に可能です。
やはり、主要交通路が複数通っている岡山県はなかなか便利なのです。
山の中をくねくねと続く県道を走り、「下町駐車場」へ。広大な駐車場ですが、訪れた際には他の車も少なく、どこでも停め放題という感じでした。
町並みの中心部に近いのは、もう少し坂道を上った先にある「千枚駐車場」ですが、楽々と停められたのでこれでヨシと言うことにします。
どうせ、町並みを行ったり来たりすることになるので、どちらに停めても大差はないのです。
坂道を歩き始めてすぐ、前方に赤い瓦屋根が見えてきます。ここから約300メートルに渡って、古い木造家屋が建ち並んでいるわけです。
石州瓦とベンガラが使われた「赤い町並み」、他ではちょっと見られない景観なのは、少し歩くだけですぐに分かると思います。
観光地としても人気になっているため、ベンガラ染の商品などを売るみやげもの屋さんが何軒もあります。
また、昔ながらのおそばを出す食堂やカレー屋さんもあるので、食事に困ることはないでしょう。
まるでお城のような「広兼邸」の迫力は圧倒的
集落のすぐ近くには、旧吹屋小学校の校舎が残されています。
明治時代に建てられたもので、2022年からは一般の見学も可能になりました。こちらももちろん、訪れてみたいです。
そのそばには、その木造校舎を模した建物のホテル(「ラフォーレ吹屋」)もあり、町並みを一望することもできるようです。一度は泊ってみたいですね。
なお、吹屋集落から三キロほど離れた場所には映画撮影にも使われた豪邸、「広兼邸」の建物も残されていて、こちらも必見です。邸宅と言うよりはほぼお城で、そのたたずまいの迫力には圧倒されます。
ちょうど広兼邸と吹屋集落の間には、吹屋銅山の笹畝坑道を見学(というかちょっとした探検気分を味わえます)できる施設もあるので、こちらもセットで訪れると良いかもしれません。
訪れてみたい、山陽エリアの古い町並み
山陽エリアの古い町並み
倉敷の古い町並みを歩いてみよう ~かつての運河、倉敷川沿いの蔵屋敷~(岡山県)
下津井の古い町並みを歩いてみよう ~ミニ電鉄も走った、瀬戸大橋の麓の町~(岡山県)
上下の古い町並みを歩いてみよう ~キリスト教会がシンボルの峠の町~(広島県)
鞆の古い町並みを歩いてみよう ~「ポニョ」の舞台としても知られる景勝地~