鳥取市の用瀬は、鳥取と姫路を結んだ智頭往来の宿場町。
現在でも、智頭急行線経由で山陽と山陰を結ぶJR因美線の駅があり、国道が交差する交通の要衝です。
山あいの川沿いに佇む静かな町で、メインストリートとなっている旧街道筋には、赤い石州瓦を使った伝統的な家屋が見られます。
智頭往来に並行する、瀬戸川沿いにも古い町並みが残り、美しい水が流れる水路の石垣の上に民家や蔵が建ち並びます。
この記事では、用瀬の古い町並みの見所や、マイカーや鉄道などで訪れる場合のルートについて紹介しています。
また、丹波篠山周辺で宿泊できるホテル・旅館も掲載しました。
実際に訪れた際の訪問記も掲載しているので、参考にしてみてください。
瀬戸川の美しい流れが印象的な宿場町
山陽と山陰を結んだ街道の要衝
鳥取市の南端に位置する用瀬(旧用瀬町)は、鳥取と姫路を結んだ智頭往来(因幡街道)の宿場町です。
さらに時代をさかのぼれば、山名氏の家臣だった用瀬氏が開いた城下町でもありました。
大正時代には鉄道(因美線)が開通し、平成に入ってからは兵庫県の上郡へと直通する智頭急行線経由の列車も通るようになりました。
また、国道53号線と482号線が交差するなど、現在でも山陽地方と山陰地方を結ぶ交通ルートの要衝とはなっていますが、大きく開発が進むことはなく、山あいの川沿いに佇む静かな町という印象です。
町のメインストリートとなっている智頭往来沿いのあちこちに、かつての造り酒屋などの昔ながらの伝統的な家屋が残ります。
赤い石州瓦を使った、いかにも山陰地方らしい瓦屋根の建物がいくつも見られるのが特徴です。
町なかを流れる水路、瀬戸川沿いの風景が美しい
智頭往来に並行して南北に流れる、瀬戸川沿いの小道にも古い町並みが残っています。
水路に沿って続く石垣の上に、民家や蔵が建ち並ぶ風景は、用瀬を代表するものと言っても良いでしょう。
元々この瀬戸川は、町の西側を流れる千代川に流れ込む谷川だったものを、生活用水として整備したもの。石組みの水路の流れる水は大変に美しく、清流の象徴である梅花藻も生息しています。
かつては十七基の水車が設置され、工業用水としても利用されていました。
水路沿いの古い民家の中には、おしゃれなカフェとして改装されているものも見られて、観光客にも人気のスポットとなっているようでした。
この町を訪れた5月初めには、端午の節句ということで「鯉のぼり流し」という行事が行われていて、瀬戸川の流れの底を鯉のぼりが泳いでいました。
比較的近年始まった行事のようでしたが、こちらもなかなか風情がありました。
用瀬を代表する伝統行事「流し雛」
用瀬の地名が最も良く知られているのは、伝統行事の「流しびな」によってでしょう。
旧暦の3月3日に、紙で作られたひな人形を藁でできた丸い桟俵に乗せて、町の西側を流れる千代川に流すという行事で、平安時代から行われていたという説もあります。
もちろん、普段訪れても行事を見ることはできませんが、千代川のそばに「もちがせ流しびなの館」という展示施設があって、その概要と町の歴史を知ることができます。
アクセス方法
マイカー・レンタカー利用の場合
鳥取自動車道の用瀬インターが近くに
中国道の佐用ジャンクションと鳥取市の間を結ぶ、鳥取自動車道の用瀬インターチェンジが町の近くにあります。
用瀬の市街地までは2キロほどで、約5分で到着します。
鳥取自動車道は基本的に無料(作用インターと作用平福インター間の一区間のみ有料)なので、非常にお得感があります。
「もちがせ流しびなの館」に無料の駐車場が
街道沿いの市街地から、千代川を渡った先にある「もちがせ流しびなの館」には30台の駐車スペースがある無料駐車場があります。
用瀬駅前まで約500メートル、徒歩5分ほどです。
施設見学者用の駐車場ですが、流しびなにまつわる展示や千代川を一望できる展望室、観光物産センターもあって必見の施設なので、ここを見学後に町並み歩きというコースがおすすめです(受付でその旨を伝えるようにしましょう)
入館料300円、開館時間は9:00~17:00。水曜日は閉館です(祝日の場合を除く)
http://nagashibinanoyakata.jp/
(もちがせ流しびなの館公式サイト)
鉄道・バス利用の場合
JR因美線の用瀬駅が町の玄関口となっていて、降りてすぐ目の前を智頭往来が通っています。
この区間の因美線は、京阪神方面との間を結ぶ智頭急行線との直通運転が行われており、山陽と山陰を結ぶ一大ルートの一部となっています。
ただ、用瀬駅には特急のスーパーはくと・スーパーいなばが停車しないため、最寄りの智頭駅で各駅停車に乗り換えなければならないことから、列車本数は1~2時間に1本程度と利便性は少し落ちてしまいます。
(智頭・用瀬間は乗車時間10分ほど)
対応策として、智頭駅前から用瀬駅前へと走っているバスに乗るという方法があります。
こちらも1時間に1本ほどですが、たとえば行きかえりのどちらかをバスにする、などの組み合わせを考えれば、各駅停車の列車と合わせてそこそこの本数が確保されていることになります。
所要時間は20分ほど、運賃は520円です(2023年1月現在)。
https://hinomarubus.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/03/91-95%E5%9C%9F%E6%97%A5%E7%A5%9D.pdf
(日の丸バス・用瀬智頭線時刻表)
泊まってみたい、鳥取市のホテル&旅館・5選
用瀬駅の周辺には、あまり宿泊施設がないというのが現状です。
ただ、用瀬から鳥取駅までは鉄道・バスで30分少しの距離なので、鳥取市内で宿泊するという選択肢があります。
宿泊した人の評価が高かったホテルや旅館を楽天トラベルで調べて、泊まってみたいと思ったところを5個所選んでみました。(2023年1月現在、リンク先は楽天トラベル[PR])
鳥取の市街地には「鳥取温泉」という温泉があり、県庁所在地の市街地にある珍しい温泉として知られています。
貸し切りの露天風呂がある「観水庭こぜにや」をはじめ、やはりその温泉に入れるところの評判が良いみたいです。
最強寒波が襲来している中でこの記事を書いていますが、温泉の写真を見ていると本当に行きたくなります。
鳥取市の近隣では、湯村温泉や岩美温泉も良いですね。
春の日の水路 ~用瀬の町並みを訪ねてみました~
高速ディーゼル特急を堪能
用瀬に出かけたのは、GWのど真ん中のことで、智頭と合わせて日帰りでした。
混雑を避けるために、まずは京都を朝五時台に出る快速に乗って、姫路を目指します。
この時間だと「新快速」ではないので、二時間以上かかって到着。姫路では特急の「スーパーはくと」に乗り継ぎます。
智頭急行線を高速で突っ走るこの列車、山陰方面に出かけるときの定番なのですが、今回は指定を取れていないので座るのは難しそうです。智頭駅までは一時間くらいなので、ここは我慢するしかありません。
と思ったのですが、姫路で降りた人もいたようで、自由席に空きがありました。快適な座席で外を眺めながら、新幹線のような高架路線の智頭急行を疾走するディーゼル特急の力強さを堪能できました。
用瀬駅に特急は停車しませんが、まずは智頭駅で降りて宿場町を散策します。智頭往来沿いにかなり大規模に古い町並みが残っていて、素晴らしい町でした。
またいずれ記事を書くので、本稿では智頭の詳細は省略しますが、隣り合う智頭と用瀬はセットで訪れるのも良いと思います。
水路の鯉のぼりと、荒ぶるお御輿
智頭から用瀬までは、また智頭急行線の各停に乗ります。なお、二つの町を結んで千代川沿いを走るバスもあって、帰りはそのバスで智頭まで戻りました。
智頭駅もそうでしたが、昔ながらの用瀬駅の駅舎は静かな用瀬の町の玄関口にぴったりな雰囲気です。
瀬戸川の水路沿いの町並みが有名なのですが、まずはメインストリートからということで智頭往来沿いの町並みを歩き、高台の円教寺から町を眺めます。
この日はたまたまお祭りでもあったようで、お御輿も出ていました。
「流しびな」で有名な町ですが、端午の節句に当たるこの時期には、「鯉のぼり流し」というイベントが行われていたようで、瀬戸川の水路には何匹もの鯉のぼりが泳いでいました。
川沿いを歩いているうちに、先ほどのお御輿の担ぎ手の人たちが水路の中に突っ込むんでいるという面白い場面に遭遇しました。
このお祭りの定番になっているのでしょうか。みなさん楽しそうで、こちらも笑顔になった春の一日でした。
訪れてみたい、山陰エリアの古い町並み
山陰エリアの古い町並み
津和野の古い町並みを歩いてみよう ~漆喰の白壁と赤瓦が美しい城下町~(島根県)
温泉津の古い町並みを歩いてみよう ~石見銀山の港町だった、世界遺産の温泉地~(島根県)