新潟県の長岡の東側にある栃尾の町は、川の合流点にできた小さな盆地に発展した城下町で、まだ十代だった上杉謙信(長尾景虎)が最初に名を上げた「栃尾城の戦い」でも知られます。
廃城後の江戸時代から明治にかけては繊維産業などで栄え、今でも市街地には歴史を感じさせる建物が残ります。
積雪から通行路を守るため、歩道の上に造られた「雁木」という木造の屋根が残ることでも知られ、いかにも雪国らしい風景が見られる町です。
この記事では栃尾の町並みの見所や、実際に鉄道やマイカーなどで古い町並みを訪れるためのアクセス方法や駐車場について紹介しています。
実際に訪れた際の訪問記も掲載していますので、こちらも参考にしてみてください。
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雪国のアーケード、「雁木」の残る城下町
二つの川の合流点にある盆地に発展した町
新潟県中越地方の中心都市である長岡の、少し東側に位置する栃尾(新潟県長岡市)は、刈谷田川と西谷川の合流点にできた小さな盆地に広がる町です。
盆地の西側の山に「栃尾城」が築かれたことから、その城下町としての発展の歴史が始まったと言われます。
十代の頃にこの栃尾城に入城した上杉謙信(長尾景虎)が、攻め寄せた豪族を初陣にて撃退して名を上げたという「栃尾城の戦い」でも知られています。
長尾氏の城下町として発展した栃尾の町でしたが、戦国時代が終わると栃尾城は廃城となってしまいます。
しかし、江戸時代から明治にかけて繊維産業などが発達したことで、商工業の拠点としての繁栄が続くことになりました。
平成の合併で、現在では長岡市の一部となっている栃尾の町ですが、独立した町としての風格は健在です。歴史を感じさせる建物が残る市街地を歩くと、かつての繁栄ぶりを今でも想像することができます。
「雁木」と木造建築の連なる、古い町並みと小路
昔ながらのメインストリートとなっている県道19号線沿いの滝の下町や、西谷川沿いの表町・大町などの区域に、古い町並みが残ります。
栃尾の町並みの特徴が木造のアーケードとでもいうべき「雁木」で、これは積雪の際にも通行を確保するために、建物の前に連続して造られた屋根のことです。日本海側などの積雪の多い地方に見られます。
特に、滝の下町の三崎屋醸造付近では、その「雁木」と立派な妻入りの木造建築が通りに沿って見事に連なる、この町を代表する景観が見られました。
また、表町の辺りでは、新潟大学の学生との協働によって木造の雁木を再生しようという取り組みも行われていました。
中越地震で被災した家屋の古い木材を再利用したりもしているということで、違和感を感じさせない風景となっていて、非常に良い取り組みだと思います。
「雁木」の下を歩くと、外部から守られているような安心感を感じられて心地よいものです。津軽の「こみせ」などにも共通しますが、長年の間通行人を雪から守ってきてくれたという歴史が伝わってくるのだろうと思います。
大通りから枝分かれする小径には、「十二山小路」「本村小路」などと一つ一つに「小路」などの名前がついているようで、その入り口には由来などを記した木製の案内板が設置されていました。
こんなところにも、歴史のある町らしい趣が感じられました。
(滝の下町→表町)
「あぶらげ(油揚げ)」が栃尾の名物
栃尾の名物として知られるのが「あぶらげ」(油揚げ)です。
そのおこりには諸説あるようですが、少なくとも江戸の中期からの歴史があるというのは間違いなさそうです。
普通の油揚げよりもずっと大きく、外側はカリカリなのに中はふわっとした仕上がりが特徴で、ぜひとも揚げたてのものを食べてみたいところです。
栃尾の町なかには、あぶらげを作って売っている豆腐屋さんが15軒以上もあるようです。
https://tochiokankou.jp/album/aburage.html
(栃尾観光協会のあぶらげ店案内ページ)
アクセス方法
鉄道・バス利用の場合
1975年までは軽便鉄道の栃尾線が走っていた栃尾ですが、現在では越後交通のバス路線が、上越新幹線の「とき」が停まる長岡駅との間を結んでいます。
「とき」は一時間に1~2本程度の運行で、東京からは1時間40分ほど。新潟からは約20分です。
バス路線は、長岡駅東口(4・5番線)と大手口(11番線)から、合わせて1時間に1~2本くらいの特急・快速バス(東口発)と急行バス(大手口発、見附経由)が運行されています。
終点の栃尾車庫前までの所要時間は、東口発が40分前後、大手口発が1時間ほどとなっています。
表町や滝の下町の周辺へは、終点の手前の「中央公園前」で降りるほうが、歩く距離が少し近くなっているようです。
http://www.echigo-kotsu.co.jp/contents/diagram/route/nagaoka/east/0401_20241001.pdf
(長岡駅東口4・5番線発の越後交通バス時刻表)
http://www.echigo-kotsu.co.jp/contents/diagram/route/nagaoka/west/1101_20241001.pdf
(長岡駅大手口11番線発の越後交通バス時刻表)
マイカー利用の場合
長岡で合流する関越道・北陸道が利用可能
長岡は、首都圏方面からつながる関越自動車道と、関西方面からつながる北陸自動車道が合流する長岡ジャンクションがある、交通の要衝となっています。
栃尾の町へは、関越道の長岡インターチェンジか、北陸道の中之島見附インターチェンジが最寄りとなっていて、それぞれインターを降りてから一般道経由で30分前後で到着できます。
中之島見附インター→栃尾
長岡インター→栃尾
中央公園の駐車場が利用できる
尾地域交流拠点施設「トチオーレ」のある栃尾中央公園には、普通車150台以上が駐車できる無料の駐車場が整備されています。
駐車場から近い、表町・大町の辺りに立ち寄ってから、昔ながらの商店街が続く谷内通りなどを眺めつつ少し歩くと、滝の下町の古い町並みが見えてくるという感じです。
朝の城下町散歩、そして迫る危機 ~北陸新幹線経由で栃尾を訪ねる~
中越の都会、長岡駅前の夜
栃尾の町がある長岡市と言えば、新潟県中越地域の中心となる大きな町で、人口も25万人を超える新潟県でも2番目の都市です。
昔から一度行ってみたいと思っていたわけなのですが、北陸新幹線の開通で関西から上越方面が非常に便利になり、訪ねやすくなった出雲崎の町並みなどを巡るプランを考えた際に、じゃあ夜は長岡に泊まろうということにしました。
まずは特急サンダーバードと北陸新幹線で上越妙高駅へ。そこからレンタカーに乗り換えて、柏崎市高柳町の「荻の島環状集落」と出雲崎を巡ることにしたわけですが、山間地域にある荻の島から、海岸沿いの出雲崎までは意外と遠く、到着に手間取ってしまいました。
しかも、出雲崎の町並みが想定以上に大規模で、往復7キロの距離を歩いているうちにあっという間に夕暮れに。
日の長い7月末だったのに、長岡駅近くのホテルに着いた時には、もうすっかり暗くなってしまっていました。
少々疲れを感じつつ、夕食のために街に出ましたが、さすがと言うか長岡駅前はかなりな都会、夜の9時過ぎでも人通りがあって、にぎわっている印象でした。
夕食後、ドーナツショップ(閉店して、駅ビルに移転したようです)でコーヒーを飲みながら本を読んだりして、夜の街でゆったり過ごしたりしたのですが、実はその時すでにとある危機が迫っていたことに、まったく気付いていませんでした。
朝はのんびり城下町歩き、午後は緊急脱出のサンダーバード
翌朝、ホテルを出てさっそく栃尾の町へと向かいます。長岡から栃尾までは30分くらい、まだ朝のうちに到着です。
どの辺りが古い町並みの中心なのか、いまいち分かっていなかったのですが、とりあえずはメインストリートとなっている谷内通りの商店街を南下してみます。
歴史的町並み、というのとはちょっと違うかもしれませんが、昭和を感じさせる昔ながらの商店街が緩やかにカーブを描く通りに沿って続く様子は、いかにも地域の中心らしい風格を感じさせます。
谷内通りをさらに進み、秋葉トンネルに続く大きな通りを越えた先にあるのが滝の下町。写真で見たことのある木造の「雁木」が続く風景が姿を現します。
喜んで往復しては写真を撮ったわけですが、失敗したなと思うのが、歴史のありそうなよさげなお豆腐屋さんがあったのに、名物の「あぶらげ」を食べなかったこと。これは町を去ってから後悔しました。
再び谷内通りへ戻り、奥に常安寺のお堂が見えるたたずまいが気になっていた、西厳寺小路に入ってみます。
お寺の手前には、西谷川を渡る橋へと続く小路があり、こちらも気になったので寄り道して渡ってみます。
川の向こう側で見つけたのが、思いもよらない立派な町並み。実はここが、栃尾を代表する伝統的な町並みの一つが残る表町なのでした。
なかなか行き当たりばったりの感がありますが、こういうのが城下町を歩く醍醐味であるとも言えます。
さて、栃尾の町歩きを終えて長岡駅に戻り、駅ビルで昼食のへぎ蕎麦を食べた後、次の目的地である上越市の高田へと向かいます。高田は上越妙高駅のすぐそばなので、午後はまたゆっくり町歩きをするつもりでした。
今はJRの駅ではなくなってしまった高田駅に立ち寄って、ようやく異変に気付きました。台風接近のため、夕方のサンダーバードが全て運休になると掲示が出ていたのです。
なんと、関東方面へ向かっていた台風が、引き返してきて真西に進んでいるということで、こんな進路は聞いたことがありません。
慌てて上越妙高駅に戻り、行列の出来ている窓口で列車の変更をして、北陸新幹線に飛び乗って新潟を去りました。事実上最終便となったサンダーバードは強風で湖西線を走れず、遠回りで時間はかかりましたが、無事に帰りつくことができました。
高田の町歩きが中途半端で、ちょっと心残りな旅行となりましたが、いずれまた同じようなルートで新潟に行ってみようと思っています。
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