高級ブランド茶の「八女茶」でも知られる八女福島は、古くから産業・物流の中心地として栄えた町です。もともとは城下町で、城がなくなったのちに町人町が独自の発展を遂げて、今の姿となりました。
城の南側を迂回するように東西をつないでいた「往還道」の道沿いに、古い町並みが残ります。
白壁の妻入り・蔵造りの重厚な町家がずらりと並ぶ様子は見事です。
この記事では、そんな八女福島の町並みの見所や、車や鉄道・バスで訪れる場合のルートについて紹介しています。
実際に訪れた時のレポートも掲載しているので、参考にしてみてください。
八女地方の産業の中心地として繁栄した町
「八女茶」や伝統工芸で知られる
福岡県のほぼ南端に位置する八女福島(福岡県八女市)は、古くから八女地方の産業・物流の中心地として栄えた城下町です。
現在でもここが八女市の中心で、市役所もこの八女福島にあります。
もともとは、16世紀に城下町として整備されたことから歴史の始まった町で、城が廃された後、町人町が独自の発展を遂げて、今の姿となりました。
八女というと高級ブランド茶の「八女茶」を思い浮かべる方も多いと思いますが、他にも電照菊などの商品価値の高い作物が生産される地域で、筑紫平野の肥沃な土地を生かして発展してきた町です。
また、和紙や仏壇などの伝統工芸が盛んで、「匠」の町としても知られます。「燈篭人形」と呼ばれる人形芝居(無形文化財)など、独自の文化も継承されています。
城下町の名残「旧往還道」の周辺に古い町並みが残る
福島城(現在の八女公園)の南側を迂回するように東西をつないでいた「往還道」沿いに置かれた「町人町」が、八女福島が城下町ではなくなった後も、引き続きこの地方の経済の中心地として発展しました。
(下のgoogle mapで示したルートが旧往還道の一部)
その後、国道3号線バイパスなどが造られたことによって町の中心が郊外に動き、結果的に旧市街の道路網や城を囲んだお堀などは開発で破壊されることもなく、そのままに残されることになりました。
現在でも「旧往還道」とその周辺には古い町並みが大規模に残り、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)にも選定されています。
軒を連ねて立ち並ぶ、妻入り・土蔵造りの重厚な町家
漆喰で塗り籠めた白壁の土蔵造りが多くみられるのが八女福島の町並みの特徴で、江戸時代の末期から明治時代にかけて建てられたものが現存しています。
その多くが、妻入り形式(建物の棟と直角の面が通りを向いている)となっているため、屋根の三角形が通りに面してずらりと並ぶことになります。
特に紺屋町の辺りでは、妻入りの家屋が見事に連続していて、壮観です。
これらの町家は、飲食店として再利用されている場合も多く、観光地としての八女福島の賑わいに今でも役立っています。
アクセス方法
マイカー・レンタカー利用の場合
九州自動車道の八女インターが便利
北九州市、福岡市から鹿児島までを結ぶ九州自動車道が八女福島の市街地の西側を通っていて、八女インターチェンジがあります。
八女インターから古い町並みがある辺りまでは約5キロ程度で、10分ほどで到着します。
「八女伝統工芸館」が古い町並みの近くにある
古い町並みのある旧往還道から数百メートル、徒歩5分のところにある「八女伝統工芸館」では、福島仏壇や和紙などの伝統工芸品に関する展示を無料で見ることができ、お土産を買うこともできます。
1985年に廃止された国鉄矢部線の筑後福島駅跡である鉄道公園に隣接しており、館内には線路の一部が保存されています。
駐車場は無料で、80台分のスペースがあります。
鉄道・バス利用の場合
町へのアクセスの役割を担っていた、いくつもの路線が廃線になった歴史を持つ八女福島。現在では鉄道路線はなく、JR羽犬塚駅から発着する堀川バスの路線が、その代わりとなっています。
1時間に2~3本程度の運行があり、所要時間は20分ほどです。
また、JRの久留米駅からのバス路線も利用可能です。こちらは所要時間は50分ほどかかりますが(西鉄久留米からだと40分ほど)運行本数は1時間に4~5本とこちらのほうが多いようです。
両路線のバス乗り場がある土橋交差点から、旧往還道沿いの古い町並みまでは、徒歩5分程度です。
http://www.horikawabus.jp/local/table/newest/01.pdf
(堀川バス時刻表)
路面の汽車が今はバス ~八女福島に行ってみました~
名前も由来も面白い、羽犬塚駅
その日は朝から長崎県雲仙市にある神代小路の町並みを訪問し、そこから諫早・佐賀市などを経由して鳥栖から南下という、まるで有明海の周りをぐるりと回るようなコースで、まずは筑後市の羽犬塚までやってきました。
在来線特急の乗り継ぎで諫早から羽犬塚まで2時間くらいかかりましたが、今ならば諫早から武雄温泉までは新しい西九州新幹線を使うことが可能ですね。
試しに経路検索してみたら、新幹線を使えば30分短縮されて1時間半で到着するようです。
羽犬塚は筑後市の中心で、八女市の中心部である福島からも最寄りの主要駅になっています。
面白い地名で、駅前や県税事務所の前などには羽の生えたワンちゃんの像もあります。
由来は諸説あるようですが、豊臣秀吉が退治した悪い妖犬だったとか、秀吉の愛犬だった羽犬がここで亡くなったとか、真逆のような内容の説があるのが面白いです。
「ポンポン軌道」の走ったルートで八女福島の中心へ
さて、その羽犬塚駅前から堀川バスに乗って約20分ほどで、福島のバス乗り場に到着します。
バス乗り場と言っても立派な建物があり、駅のような雰囲気でした。
他にも西鉄バスが西鉄久留米駅から運行されているようで、堀川バスのバス乗り場と交差点を挟んで向かい合うように、こちらのバス停もありました。
現在ではリニューアルされて「つながるバス停」という名前になり、カフェを思わせるおしゃれな木造の待合所が造られて、お弁当の販売なども行われているようです。
この「土橋」という交差点は、久留米駅からの路面電車の終点だったようです(1950年代に廃止)。
また、戦前には羽犬塚との間に「南筑軌道」という軌道もあって、石油を焚く機関車がポンポンとエンジン音を立てながら路面を走る、シュールな光景が見られたそうです(「ポンポン軌道」と呼ばれた)。
古くから、まさに町の玄関口だった場所なのでした。
https://www.city.yame.fukuoka.jp/material/files/group/33/004_005.pdf
(八女市役所作成の解説)
バス停から、八女市の市街地を南西のほうへとにしばらく歩くと、「紺屋町」の交差点から南側に、立派な妻入りの商家群が並ぶのが見えてきます。
これが「旧往還道」で、その周辺が重伝建地区にも選定されている古い町並みが残るエリアということになります。
「旧往還道」に沿って歩くだけでも見ごたえ十分。
表通りを少し離れてみても、やはり立派な町家や蔵、そしてかつての福島城のお堀の跡などを見つけることができるでしょう。
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