若狭エリアの中心である小浜は、古くから関西との結びつきが強かった港町です。
平城京の時代からすでに、若狭は海産物や塩の供給地となっていて、小浜と京都を結んだ「鯖街道」を通じての文化的なつながりもありました。
江戸時代には城下町として整備されることになり、海に近い「小浜西組」の区域には、その名残りを感じさせる古い町並みが大規模に残ります。
特に、かつての茶屋町である三丁町では出格子が続く見事な町並みが見られて、京文化の影響を連想させます。
この記事では小浜の町並みの見所や、実際にマイカーや鉄道などで古い町並みを訪れるためのアクセス方法や駐車場について紹介しています。
実際に訪れた際の訪問記も掲載していますので、こちらも参考にしてみてください。
古くから都との結びつきが強かった、若狭の城下町
奈良や京の都へ、海産物を供給していた港町
福井県の西側、滋賀県や京都府と隣り合う若狭エリアの中心である小浜は、古くから関西との結びつきが強かった港町です。
平城京の時代から、若狭国は朝廷に海産物などを送る「御食国(みつけくに)」に該当したと考えられていて、平城宮跡からは若狭からの荷札に当たる木簡が多数見つかっています。
特に、塩の供給が非常に多かったようです。
奈良・東大寺で毎年3月12日に行われる「お水取り」の行事で、二月堂のそばにある「阿加井屋」から汲み上げる香水は、小浜にある若狭神宮寺から地下を伝って送られたものと言い伝えられています。
神宮寺の側では、対になる「お水送り」の行事が3月2日に行われます。
これらの行事は平城京の時代である西暦750年頃から行われており、このきわめて長い歴史からも、現代まで続く奈良と若狭の結びつきが分かります。
平安京に都が移ったその後も、小浜と京の都とは「鯖街道」とも呼ばれる若狭街道や琵琶湖を利用した水運などでつながっていて、その名の通りサバなどの魚介類を供給する拠点となっていました。
その歴史は江戸時代まで長く続き、京料理の文化を支えることになりました。
また、逆に京からも工芸品や文化が鯖街道を通って若狭へと伝わることにもなり、かつての茶屋町である三丁町などの古い町並みにも、京文化の影響が感じられます。
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「小浜西組」の一帯に、城下町の古い町並みが残る
江戸時代の初めごろ、京極氏によって海と川に囲まれた中州に小浜城が築かれ、小浜は城下町として発展することになりました。
町は東組・中組・西組の三つの区域に整備されることになり、そのうち小浜の市街地の西側、後瀬山と小浜湾(「人魚の浜」という海水浴場となっている)に挟まれた「小浜西組」の一帯に、今でも古い町並みが大規模に残っています。
(国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています)
西組の中でももっとも西側に位置するのが、かつての茶屋町だった「三丁町」で、狭い通りに沿ってかつてのお茶屋の建物が並んでいます。
出格子が続く町並みの風情は確かに、鯖街道の向こうにある京都の花街を連想させるものと言っても良いかも知れません。
この町には芸妓さんのおられる料亭もあり、現役の花街とのことです。
「小浜西組」には、市街地の東西に横切るように旧丹後街道が走っています。
その街道沿いと、北側に並行する通りには商家などの伝統的な家屋が多数見られました。
町並み歩きのコースとしては、八幡神社前から旧丹後街道を西に向かい、街道が突き当たって南へ向きを変える辺りから三丁町に入り、さらには丹後街道の北側の通りを歩いて東へ戻ってくるというのが一つのモデルになりそうです。
すぐそばには「人魚の浜」のビーチもあるので、海辺を散歩して見るのもよいかも知れません。
海に隣接した町並みだということを、実感できると思います。
旧丹後街道から三丁町へのコース
町並みのそばには寺町や、古い芝居小屋(旭座)も
市街地の周辺に国宝の三重塔(明通寺)や重要文化財の仏像などの文化財が多数残ることから、「海のある奈良」という別名でも呼ばれることのある小浜ですが、西組の町並みの山側にはいくつもの寺院が集まる寺町もあります。
国宝建造物まではありませんが、八百比丘尼(人魚の肉を食べて不老不死になったという伝説上の人物)が最後に過ごしたという空印寺や、海底から引き揚げられたという如意輪観音半跏像が本尊となっている正法寺など、海との関わりがみられるのが小浜らしい感じです。
また、西組に隣接する中組に残されていた明治時代の芝居小屋「旭座」が、数百メートルほど離れた商業施設の跡地に作られた「まちの駅・旭座」の中に移設・復元されています。
明治44年に建てられたということで、福井県内では唯一の近代芝居小屋です。全国的にも貴重なものとなっています。
アクセス方法
敦賀まで延伸された北陸新幹線などと小浜線を乗り継ぐ、鉄道利用の場合
JR小浜線の小浜駅が、町の玄関口となっています。
駅から小浜西組の辺りまでは約1キロ、徒歩15分くらいです。
小浜線は、敦賀と京都の東舞鶴とを結ぶローカル路線で、特急列車などの運行は無く、約1~2時間に1本程度の普通列車だけが走っています。
敦賀駅から小浜駅の所要時間は約1時間、東舞鶴からは50分弱程度です。
2024年3月に北陸新幹線が敦賀まで延伸開業になったことで、敦賀駅は今や一大ターミナルとなっていて、アクセス手段の種類も非常に増えました。
東京や大阪・京都、名古屋からの経路をまとめると、次のようになります。
小浜駅までの主な経路(2024年3月31日現在、運賃・料金は繁忙期料金)
- 東京駅から小浜駅
北陸新幹線「かがやき」「はくたか」(1時間に1本ほど運転)で敦賀駅まで約3時間20分、そこから小浜線に乗り換えて約1時間。
運賃・料金は17,220円です。
(または、東海道新幹線で米原まで「ひかり」などで約2時間10分、そこから特急「しらさぎ」に乗り換えて約30分、さらに小浜線に乗り換えて約1時間) - 大阪駅から小浜駅
北陸本線の特急「サンダーバード」(1時間に1~2本ほど運転)で敦賀駅まで約1時間20分、小浜線に乗り換えて約1時間。
運賃・料金は6,000円です。
(または、新快速電車で敦賀駅まで約2時間、小浜線に乗り換えて約1時間) - 名古屋駅から小浜駅
特急「しらさぎ」(1日に8本運転)で敦賀駅まで約1時間40分、小浜線に乗り換えて約1時間。
運賃・料金は6,000円です。
(または、東海道新幹線で米原まで「ひかり」などで約30分、そこから特急「しらさぎ」に乗り換えて約30分、さらに小浜線に乗り換えて約1時間。米原から敦賀までの「しらさぎ」は1時間に1本程度運転) - 京都駅から小浜駅
特急「まいづる」(1日に8本運転)で東舞鶴駅まで約1時間40分、小浜線に乗り換えて約50分。
運賃・料金は5,230円です。
新幹線の敦賀開業後の2024年10月から、新たな観光列車が小浜線内を走るという計画もあるようです。
また2022年などには、京都丹後鉄道のレストラン列車「くろまつ」が小浜線内を運行したこともあり、今後は観光路線としての盛り上がりが期待されます。
マイカー利用の場合
舞鶴若狭道の小浜インター利用が便利
舞鶴若狭自動車道の小浜インターチェンジが市街地の近くにあり、インターを降りてから三丁町の近くまで約5キロ10分弱となっています。
舞鶴若狭道は、北陸自動車道の敦賀ジャンクションから分岐し、舞鶴を経由して兵庫県の吉川ジャンクションで中国道へつながる高速道路です。
関東・東海方面や山陽以西からはまだ良いのですが、京阪神の周囲を大迂回するようなコースなので、特に京都からはちょっと利用しづらい道路です。
京都周辺からの場合は、琵琶湖の西側を通る湖西道路経由か、かつての鯖街道に当たる国道367号経由で向かうのが一般的でしょう。
このルートの場合、近江今津から小浜までの九里半街道の途中にある熊川宿に立ち寄ることもできますね。
(舞鶴若狭道のルート)
三丁町のすぐそばに駐車場がある
三丁町の町並みに隣接する小浜公園に駐車場があり、約40台の駐車が可能となっています。
料金も無料となっています。
青春18きっぷで行く小浜 ~小浜の町並み訪問記~
新快速から乗り換えて、のどかな小浜線へ
若狭エリアと言えば丹後方面と並んで、夏の海水浴やらキャンプやらの行楽で訪れることが多いエリアです。
たいていの場合はドライブがてら出かけることになるので、今までに何度も訪れている小浜にも、ほとんど車でしか行ったことがありません。
一度は列車に乗って行ってみたいと思っていたのですが、ちょうど青春18きっぷで出かける機会があったので、距離も時間も手ごろな小浜まで鉄道で行ってみることにしました。
JR小浜線が接続している北陸本線の敦賀駅までは、大阪方面からの新快速電車が直通しています。全線高架の湖西線を突っ走って京都から1時間と少し、クロスシートの快適な座席から琵琶湖を眺めたりしていると、あっという間の到着です。
敦賀からは小浜線の各駅停車に乗り換えるわけですが、接続がわずか3分と良すぎて車内はすでに満員。
途中駅でもたくさんの学生さんが乗って来ては降りての繰り返しで、結局小浜駅までの1時間少し、全く座ることができませんでした。
この小浜線、海に近いところを走る割には案外海が見えなくて、途中で三方五湖が少し見える程度。
でも、のどかな風景がずっと続く車窓はなかなか悪くありません。ドアの近くに立ったまま、ずっと窓の向こうを眺めていました。
町並みを歩いて、海を眺める
小浜の駅前にはなかなか立派な商店街があるのですが、平日の昼間と言う時間だったせいか、食事のできる店がほとんど開いていませんでした。
「平成通り」を海の近くまで歩いて、たまたま開いていた台湾料理店でランチを食べましたが、ここは安くておいしくて大変良かったです。小浜も海も、何の関係ない食事にはなりましたが。
駅前商店街の突き当りには、見覚えのない「まちの駅・旭座」という立派な施設が出来ていました。以前ここには大型商業施設があったのですが、廃業で再開発したようです。
敷地内には「旧旭座」という明治時代の芝居小屋があって、大型スーパーのあったこの場所に? と不思議に思いましたが、近くの中町から移築したとのことでした。
現在でもイベントなどに使われているようでしたが、この芝居小屋が核になっていることで、「まちの駅」はありきたりな観光交流施設とはちょっと違ったものになっているように思えました。
「まちの駅」の前を通る「浜参道」という広い通りを西へ向かうと、交差点の向こうから急に道が狭くなり、町家の並びが見えてきます。
これが旧丹後街道で、少し歩くと左側に八幡神社の参道と鳥居が見えてきます。この辺りからが「小浜西組」となります。
袖うだつの町家が並ぶ通りをずっと歩いて行くと、街道が左(南側)へ向かって大きく折れ曲がる地点に出ます。
ここをさらに直進して、狭い路地のような通りに入っていくと、その先が三丁町の茶屋町です。密度の高い古い町並みが、目の前に姿を現します。
平日の午後、観光客が誰もいない古い町並みを、ゆっくりと撮影することができました。
三丁町を歩いた後、すぐそばにある人魚の浜のビーチに行ってみます。当日は、気温が35度にもなる猛暑日でしたが、海からの風は涼しく感じられました。
歴史のある海辺の町はやっぱりいいなあと思いながら、静かな小浜湾の風景を眺めていました。
訪れてみたい、北陸エリアの古い町並み
北陸エリアの古い町並み
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