群馬県の山間部、川沿いの高台にある旧六合村の赤岩は、伝統的な養蚕集落の特徴を残していることで知られる集落です。
南北に走る通り沿いに、三階建てなどの大規模な養蚕農家の建物や土蔵が見られます。
小さな観音堂がいくつも点在していたりして、昔ながらの日本の風景が見られる、懐かしい雰囲気の場所となっています。
周辺エリアには温泉郷があり、赤岩の集落にもこじんまりとした日帰り温泉があったりします。
この記事では赤岩の集落の見所や、実際にマイカーや鉄道などで古い町並みを訪れるためのアクセス方法について紹介しています。
実際に訪れた際の訪問記も掲載していますので、こちらも参考にしてみてください。
江戸・明治期の養蚕農家が多数残る集落
山あいの川沿いの坂道に、昔ながらの風景が残る
中之条町の六合村(くにむら)は群馬県の北西、長野県・新潟県との境に位置し、村のほとんどが山林となっています。
同じ中之条町には四万温泉、すぐ西側に接する草津町には草津温泉があって、村の周辺はいくつもの名湯が点在する一大観光地となっています。
村内にもいくつかの温泉があり「六合温泉郷」と呼ばれています。
赤岩は、村を流れる白砂川沿いの高台に位置する小さな集落で、群馬における伝統的な養蚕集落の特徴を残していることで知られます。
川と並行するように南北に走る通り(赤岩本道)の坂道に沿って、幕末から明治にかけて建てられた養蚕農家の建物や蔵などが点在し、昔ながらの日本の風景が残ります。
独特の建築が残る貴重な町並みということで、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定されています。
大規模な養蚕農家の建物が特徴。小さなお堂もいくつもある
「湯本家住宅」など、三階建ての養蚕農家がいくつも残る
赤岩本道に沿って、かつての養蚕農家である二階建てや三階建ての巨大な民家がいくつも残っています。
本来は、この二階・三階部分が養蚕に用いられていて、蚕を飼うための「蚕棚」が広い室内にずらりと並べられていました。
まるでベランダのように見える「出梁」も特徴的で、ここで蚕の餌になる桑の葉を乾かしたりもしたそうです。
特に立派なのが三階建ての土蔵造りである「湯本家住宅」で、建築から200年近くになる古民家です。中之条町の文化財に指定されています。
開国を唱えて幕府に追われていた高野長英が、この家の二階にかくまわれていたという話もあります。
集落の周囲に点在する、小さなお堂
「上(かみ)の観音堂」「向城(むこんじょう)の観音堂」「東堂」「毘沙門堂」と、歴史のある小さなお堂が集落の中や近辺に点在しています。
このうち1764年に建てられたという「上の観音堂」は「三原郷三十四札所」の「第二十六番赤岩堂」となっています。向城の観音堂が、1811年建築。
古くから、人々の信仰心が篤い土地柄だったようです。
赤岩本道に面している「毘沙門堂」以外はどれも集落周辺の高台にあって、少しだけ坂道を上り下りすることになりますが、それほどきつくはありません。
高台からの眺めも良いので、四か所すべて巡ってみるのも面白いと思います。
観光施設の少ない静かな集落だが、日帰り温泉も
まさに静かな山村という感じの場所で、大規模なお土産屋さんなどはありませんが、集落の北側に「赤岩ふれあいの家」という観光案内所があって地元の特産品が販売されています。養蚕についての展示も行われています。
入口近くの水車が目印です。
また、集落の南側にある民家の二階を利用した「赤岩養蚕の里展示館(蚕の家)」があり、こちらも養蚕に使われた道具などが展示されています。
この二つの施設の間を歩けば、自然に集落をすべて見学することになります。
また、集落の山側には「長英の隠れ湯」という日帰り温泉があります。赤岩本道沿いに立つ火の見櫓の隣の道を山側へと入って行った場所にあるそうです(未訪問です)
高野長英がかくまわれていた村という故事から名づけられたものだと思いますが、温泉郷らしさがあって良いですね。
現在の建物は小さな小屋のような雰囲気らしくて、秘湯らしい感じが楽しめそうです。
なお、以前は保健センターに隣接した場所にあったのですが、2019年ごろに移転再開されて場所が変わっているので注意が必要です。
アクセス方法
マイカー利用の場合
関越自動車道の渋川・伊香保インターが最寄り
赤岩集落の周辺を通っている高速道路はないので、関東方面からだと関越自動車道の「渋川・伊香保インターチェンジ」を利用することになります。
途中、渋川市内の金井インターから箱島インターまでは、無料の自動車道である「上信道」(「上信越自動車道」とは全く別物。最高速度60キロだが高速道路に近い造り)が利用できるので時間の短縮が可能。
約50キロの距離ですが、1時間ほどで到着することができます。
名古屋・関西方面からだと、長野県を経由したほうが近いです。
長野県上田市にある上信越自動車道の上田菅平インターチェンジで降りて、国道144号線経由で県境を越えてこちらも約50キロ、1時間10分ほどです。
いずれはこの区間にも、上信道が延伸される予定になっています。
「赤岩ふれあいの家」に駐車スペースがある
観光案内所である「赤岩ふれあいの家」には10台分の無料駐車スペースがあります。
散策マップなどがもらえて、地元の特産品なども販売されているので、駐車の際には必ず立ち寄るようにしましょう。
鉄道&バス利用の場合
六合村の南側をJRの吾妻線が通っていて、「長野原草津口」駅があります。
高崎・前橋からの列車が1時間に1本ほど走っており、上野駅から直通の特急「草津」も一日に4本(平日2本)ほどやってきます(この駅が終点)
上野駅からは約2時間半、運賃は5,370円(指定席利用、2023年1月現在)となっています。
駅からはバスが運行されていて、所要時間は10分ほど。「南大橋」のバス停で降りて、徒歩5分程度です。
(「赤岩入口」のバス停だと、集落まで距離1キロ程度と少し遠くなります)
運行本数が1日3~4本程度と少ないので、必ず確認しておきましょう。
ローズクイーン交通 六合村バス路線案内サイト
上州の北部は信州の隣 ~赤岩集落まで行ってみました~
東京からはるかに遠い関東地方
群馬県の北部は、地方区分としては言うまでもなく関東地方に含まれます。
でも、地図を見ると東京からはずいぶん遠く、広大な関東平野も前橋や高崎辺りまでで終わり。それ以外のエリアは、大半が山地となっています。
赤岩の集落がある中之条町旧六合村となると、草津白根山がそびえる上信越高原国立公園のすぐそばで、地形的には相当な奥地という感じです。
ただ、近くに一大観光地の草津温泉などもあり、上野から直通で特急が走るJR吾妻線が村のすぐ南を通っていたりするおかげで、意外と秘境感はないかも知れません。
このように東京からは遠く離れた場所なわけですが、関西から見ると長野経由のほうが近く、信州の隣という感覚もあります。
富岡製糸場など今まで群馬県に行ったときは、実際いずれも信州に出かけた時に足を延ばして立ち寄ったという感じでした。
ついつい観音堂制覇を目指す
そういうわけで赤岩を訪れた時も、長野市から須坂を経由して国道144号で県境を越え、嬬恋村などを経由して六合村まで行きました。
帰りは再び長野県に戻って小諸の町並みに立ち寄っていて、まさに信州から上州まで足を延ばした、そういう日程でした。
寄り道にしてはまあまあハードなコースですが、こういう機会でもないと簡単には行けないしという気持ちでした。「万座・鹿沢口」という駅名を見た時は、なんと遠くまで来たものだと思いましたが、国道144号は走りやすくて快適でした。
「赤岩ふれあいの家」の駐車場に車を停めて、マップをもらって散策開始。
基本的には「赤岩本道」の一本道に沿って養蚕農家や蔵が建っているということで、時折脇道に入ってみたりもしますが、迷うようなことはありません。
ただ、気になったのが、駐車場そばの案内板に書かれていた「上の観音堂」などのお堂の数々。
これらも一通り見ないと、赤岩の集落をちゃんと見たことにはならないのではと、そんな気がしてきたのでした。
一度そう思い始めるともうだめで、坂道(そんなにきつくはない)を上り下りして、四つのお堂を全部コンプリートすることになりました(ここに載っている以外にもお堂はあります)
訪れたのは8月だったのですが、涼しい高原だったから何とかなったんだと思います。
大変でしたが、眺めも良くて楽しかったです。
コンプリートはしなくてもいいと思いますが、これらのお堂を含めて伝統的集落としての価値が認められているわけなので、最も古い「上の観音堂」だけでも訪れて、広がる景色を眺めていただければと思います。
訪れてみたい、関東エリアの古い町並み
関東エリアの古い町並み
川越の古い町並みを歩いてみよう ~蔵造りの町並みが残る「小江戸」~(埼玉県)
栃木の古い町並みを歩いてみよう ~関東有数の町並みが残る「蔵の街」~(栃木県)
伊豆大島・波浮港の町並みを歩いてみよう ~文豪ゆかりの「踊り子の里」~(東京都)