伊豆大島・波浮港の町並みを歩いてみよう ~文豪ゆかりの「踊り子の里」~(東京都)

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伊豆大島は、東京都に属する伊豆諸島の中でも最大の島で、真ん中に三原山がそびえる火山島です。
伊豆半島から20キロほどで、熱海や東京港(竹芝桟橋)からも直行の船が出ている、比較的簡単に訪れることができる離島です。

その南端近くにある波浮港は、風待ちの港として明治から昭和にかけて栄えた場所で、かつての火口湖である入り江に沿って港町が発展しました。
その風光明媚な様子から、幸田露伴など数多くの文人墨客が訪れるなど観光名所としてにぎわったと言われ、現在でも当時の雰囲気を伝える町並みが残ります。

川端康成の「伊豆の踊子」ゆかりの地としても知られ、かつての旅館が資料館として公開されるなど、「踊り子の里」として整備が行われています。
また、波浮港にゆかりのある文豪などの文学碑が30か所に建てられていて、文学散歩を楽しむこともできます。

 この記事では波浮港の町並みの見所や、実際に高速船やバスなどで古い町並みを訪れるためのアクセス方法や駐車場について紹介しています。
 実際に訪れた際の訪問記も掲載していますので、こちらも参考にしてみてください。

数多くの文人墨客が訪れた、伊豆大島南端の港町

三原山のそびえる伊豆大島の、かつての火口湖に面する港町

伊豆大島・波浮港、旧甚の丸邸付近の風景
伊豆大島・波浮港、旧甚の丸邸付近の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 伊豆半島の東側に浮かぶ伊豆大島(東京都大島町)は、9つの有人島からなる伊豆諸島で最大の島で、7000人以上の住民が暮らしています。
 同じ伊豆でも、伊豆半島が静岡県に属するのに対して、こちらは東京都
 八丈島や青ヶ島などと同じく都内の離島ということになりますが、伊豆大島は伊豆半島から20キロほどしか離れておらず、交通の便利な熱海や伊東などからも近いので、比較的手軽に訪問できる離島という感じです。

 伊豆大島は、海底火山が海面上に姿を現したという形の島なので、中心にはカルデラ状の活火山である三原山がそびえています。
 島の中心となっているのが北西側にある元町で、大島町役場などの主要な機関が集まり、東京(竹芝桟橋)や熱海からの船が発着する元町港(天候によっては、島の北端にある岡田港に発着)があります。
 これに対して、三原山を挟んだ反対側のようなところにあるのが波浮港の町で、こちらはほぼ島の南端に当たります。

 波浮港が面している小さな入り江は、もともとは火山の噴火口だった火口湖でした。江戸時代に、海とつながって今のような湾の形となったわけですが、その丸い形はなるほど火口の感じがします。

 周囲を高台に囲まれたこの地形により、風待ちの港として利用されることになった波浮の港は、漁業の拠点として明治から昭和の初めにかけて繁栄しました。
 風光明媚な地ということで文人墨客を含めた数多くの観光客が訪れ、その繁栄の様子を伝える風景が現在でも残されています。

波浮港の全景、西側の見晴らし台から

海沿いと高台の2か所に分かれる、波浮港の町

上下の2つの町をつなぐ「踊り子坂」

 元々が火山に由来するためか、波浮港の町の地形は独特のものとなっています。
 円形の湾の海沿いに続く町並みと、その湾を見下ろす高台の上にある町の2つに分かれていて、その間を「踊り子坂」と呼ばれる240段の階段がある坂道がつないでいます。
 急な坂道の階段を下っていくと、やがて目の前が開けて海が見えてくる様子が、海辺の町らしい風情を感じさせてくれます。

海に向かって続く、「踊り子坂」の階段(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

「踊り子」ゆかりの旅館も残る、海沿いの町並み

波浮港・海沿いの町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 海沿いの町並みは、湾曲する狭い通りに沿って木造の家屋が並ぶ、いかにも港町らしい風情が感じられます。
 また、この町並みを見渡すような場所、「踊り子坂」の登り口近くにあるのが「踊り子の里資料館」として公開されている旧港屋旅館で、明治から大正にかけて建設された木造三階建ての旅館です。
 その名の通り川端康成の「伊豆の踊子」のモデルとなった旅芸人一座が芸を披露した場所と言われていて、波浮港の観光の中心となっています。

波浮港・旧港屋旅館(踊り子の里資料館)付近の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)
(踊り子の里資料館内部の展示、海が一望できる部屋)

明治時代の網元の屋敷などが残る、高台側の地区

波浮港、旧甚の丸邸付近の風景
波浮港、旧甚の丸邸付近の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

「踊り子坂」を上がった高台の側には、明治時代の網元の屋敷であった「旧甚の丸邸」が残ります。
 大谷石を用いた石造りの二階建ての屋敷で、こちらもその内部が公開されています。
「踊り子」の旅芸人一座が、こちらの座敷に招かれて芸を披露することもあったようです。

 この辺りは、網元の屋敷が立ち並んだ区域で、波浮港の中心となっていた場所でした。
 築100年を超えるような古民家を利用したゲストハウスもいくつか営業していて、その歴史が伝わってきます。

「踊り子坂」の入り口近くに残る「旧甚の丸邸」の石蔵
「旧甚の丸邸」内部

幸田露伴や与謝野晶子など、文人墨客が訪れた町

文学の散歩道・与謝野鉄幹歌碑(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 波浮港は数多くの文人墨客に保養地として好まれ、幸田露伴や与謝野鉄幹・晶子夫妻、林芙美子などの錚々たる文化人たちがこの地を訪れて作品を残しています。

 また、「赤い靴」や「シャボン玉」の作詞で知られる野口雨情は「波浮の港」という歌を残していて、レコードとして発売されたこの曲は大正時代としては異例の10万枚の大ヒットを記録しています。
 当時の波浮港は、かなりメジャーな観光地だったのかも知れません。

 現在の波浮港は静かな港町という感じですが、「文学の散歩道」として30か所の文学碑が設置されていて、当時に思いを馳せながら文学散歩を楽しむことができるようになっています。

野口雨情・「波浮の港」詩碑

簡単に立ち寄って眺望を楽しむことができる三原山

外輪山展望台(三原山頂口)からの眺望

 伊豆大島最大の観光名所となっている三原山ですが、火口丘を取り囲む外輪山の各所に展望台が作られていて、そこまでは車で訪れることが可能です。
 登山などをする時間がなくても、元町港や岡田港などから波浮港へ往復する途中に、気軽に訪れて眺望を楽しむことができます。

 山の周囲に広がる溶岩原は、その荒涼とした様子から「裏砂漠」などと呼ばれていて、こちらも車で訪れることができます。
 まるで月面を思わせるようなその特異な風景は、一見の価値があります。
 
 活火山である三原山では、近年では1986年に大きな噴火があり、その際には島民が全員避難という事態になったこともありました。
 現在は活動がおさまっているのですが、もしまた噴火の兆候が出てくれば訪れるのが難しくなる可能性もあります。今がチャンス、くらいのつもりで訪れるのも良いかもしれません。

三原山東側の「裏砂漠」の風景

アクセス方法

波浮港・海沿いの町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

ジェットフォイル(高速ジェット船)&バス利用などの場合

 伊豆大島へは、船で渡るのが一般的です。東京湾の周辺や伊豆半島の各地からの航路がありますが、最も便利なのが熱海港と東京港(竹芝桟橋)から出ている東海汽船のジェットフォイル(高速ジェット船)です。
 熱海港からは最短45分、東京港からは最短1時間45分となっていて、季節にもよりますが1日1~2往復程度の便が出ています。
 運賃は東京便が片道9,870円、熱海便が6,260円となっています(2024年9月現在)

 熱海港は新幹線の熱海駅からバスで15分程度、東京港の竹芝客船ターミナルは山手線の浜松町から徒歩15分くらいなので、どちらもアクセスは良好です。

 船が着く先は、伊豆大島の中心である元町港か、島の北端にある岡田港のどちらかで、これは天候状況によって変わるので注意が必要です。

https://www.tokaikisen.co.jp/boarding/searoute/
(東海汽船の解説サイト)

 元町港から波浮港までは、1~2時間に1本程度のバスが出ていて、所要時間は約30分。
 もし岡田港に着いた場合は、いったんバスで元町港まで出て乗り継ぐことになります。
 岡田港から元町港までの所要時間は20分ほどで、接続時間は余裕を持って設定されているようです。

http://www.oshima-bus.com/rosen-bus.html
(大島バスの案内サイト)

 島内を自由に観光したい場合は、やはりレンタカー利用が便利でしょう。
 元町港の近くにはレンタカー屋さんがあるので、ここで車を借りることができます。
 車なら、波浮港までは20分ほどで到着することができますが、波浮港の集落内には駐車場がほとんどないので、見晴台などすこし離れたところに停めて歩くことになるかも知れません。

高速ジェット船、ボーイング929・ジェットフォイル

実は調布飛行場からの航空便もある

 伊豆大島には空港(東京大島かめりあ空港)があり、東京の調布飛行場との間に新中央航空の航空便が存在します。
 時期にもよるようですが、1日2便程度は飛んでいるようです。
 料金は片道13,800円と高速船よりも少し高めで、調布まで行く必要もあるのですが、離島の航空便というのは魅力的で乗ってみたい気がしますね。フライト時間は約30分で、あっという間に到着です。

 岡田港と元町港の間を結ぶバスが空港の近くを経由して走っているので、飛行機から降りた後はそちらを利用して島内各地へ向かうことができます。

https://www.central-air.co.jp/route.html
(新中央航空のサイト)

(東京大島かめりあ空港)

 

関西から出かける伊豆大島 ~伊豆大島訪問記~

ジェットフォイルから見える町、その向こうに立ちはだかる険しい地形

 関東・東海方面からだと、比較的手軽な旅行先となっている伊豆大島ですが、関西から出かけて行く人は少なめだと思います。
 手軽に島へ行きたいとなると、淡路島や小豆島など、近場の瀬戸内海に選択肢がいくつもあります。
 しかし、火山島という成り立ちゆえの独特の地形とか、関東から近かったことで何人もの文豪などが訪れたという歴史とか、伊豆大島には独特の魅力が感じられて、特に「伊豆の踊子」ゆかりの波浮港にはぜひ行ってみたいと思っていました。
 旅行仲間に提案したところ、賛同が得られたので、梅雨明け後の7月下旬に数人で出かけることになりました。

 京都からはまず東海道新幹線で熱海へ向かいます。もちろん「のぞみ」は停まらないので、名古屋から「こだま」に乗り換えですが、いつもながら「こだま」の自由席はがら空きで、非常に快適でした。
 大島航路の発着する熱海港は駅から2キロ程度離れていて、バスに乗って向かったのですが、この間の道というのが要するには熱海の温泉街のメインストリートで、当日は結構な渋滞。乗り遅れないかと心配しましたが、無事に間に合いました。

 大島までの「ジェットフォイル」は時速80キロというすごい速さの船で、島までは40分ほどとあっという間。飛行機に近い感覚です。
 前方に見えてきた島の中心・元町の市街地のすぐ向こうには、険しい地形の斜面が立ちはだかっているのが見えて、この島の独特の地形がさっそく実感できました。

伊豆大島の中心・元町

「べっこう」のお寿司と高低差のある「踊り子の里」

 元町でレンタカーを借りて、まずは波浮港へ向かいます。
 近くまで来たところで、昼食に「大関寿司」さんというお寿司屋さんに立ち寄りました。大島では、魚をタレに漬け込んだものを「べっこう」と呼ぶのですが、その「べっこう」を使ったお寿司を食べることができました。離島で食べるお寿司はさすがにおいしくて、大満足です。

(中央が「べっこう」のお寿司)

 見晴らし台から全景を眺めた後、波浮港の町を歩きます。思っていたよりもずっと高低差のある町で、踊り子坂の階段が240段もあるというのに驚きましたが、下方に青い水面が見えたきた時には歓声が上がりました。ほとんど真夏で快晴なのに、意外と涼しいのも印象的でした。

 坂をほとんど下り切ったところに、「旧港屋旅館」の「踊り子の里資料館」があり、ここは来たかった場所の一つ。内部は旅館の当時そのままで、それだけでも一見の価値があります。
 展示されているのはやはり「伊豆の踊子」関連がメイン。こちらもちゃんと新潮文庫の「伊豆の踊子」を持ってきてるので、抜かりはありません。「道がつづら折りになって――」からの冒頭部は本当にすばらしいですね。

旧港屋旅館(踊り子の里資料館)(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 宿泊は元町なので、観光しながら戻ります。筆島や裏砂漠など、次々と見どころを回れるのは、離島ならではの密度の高さ。
 ホテルでの夕食では、椿油を使った串揚げを楽しむことができました。夜の元町を散歩したりもしましたが、離島の中心地の町を歩くのは楽しいですね。

 翌日は外輪山の展望台から三原山を眺めたり、今回は縁のなかった岡田港に立ち寄ったりと、島の北部を中心に観光しました。伊豆大島といえば源為朝が流された地ということで、その館跡などの史跡も見学できました。
 帰りは、今度は東京港へ向かうジェットフォイルに乗船。竹芝桟橋に近づくころにはもう夕暮れで、東京湾クルーズみたいな気分でビル群を眺めながらの本土帰還となりました。

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