運河(倉敷川)による水運の拠点として発展した町、倉敷。
江戸時代には幕府の直轄地である天領となり、備中国の産物が全てここに集まりました。川の周囲には蔵屋敷が建ち並び、今もその景観が残ります。
川の北側にある本町通り沿いなどにも古い建物が多数建ち並び、非常に大規模な歴史的町並みとなっています。
表通りから外れた狭い路地などでも、非常に素晴らしい風景が見られます。
この記事では、そんな倉敷の町並みの見所や、鉄道やマイカーなどで訪れる場合のルートや駐車場などについて紹介しています。
実際に訪問した時の訪問記も掲載しているので、参考にしてみてください。
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日本を代表する「美観地区」の町並み
かつての運河に沿って、蔵や屋敷が建ち並ぶ
倉敷(岡山県倉敷市)は、運河として整備された倉敷川による水運の拠点として発展した町です。
古い町並みが残る美観地区の周辺は、小さな島がいくつも瀬戸内海に浮かんでいた場所で、江戸時代の干拓によって一帯が陸地となったことから、現在のような姿になりました。
美観地区の北側、阿智神社のある鶴形山もかつての島の一つで、当時の名残を感じることができる地形となっています。
その重要性から倉敷は、江戸時代には幕府の直轄地である天領となり、備中国の産物が全てここに集まることになりました。
運河(倉敷川)の周囲には蔵屋敷が建ち並び、それが現在の景観へと繋がっています。
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日本の町並み保存の先駆者、古い町並みが大規模に残る
戦前にはすでに町並み保存の構想があった
戦前にはすでに、倉敷を歴史都市として後世に残すという構想が、倉敷の大実業家であった大原家(クラレやクラボウの創業者)によって提唱されていました。
運河沿いに建つ立派な屋敷の中には、大原家にゆかりがあるものも多いのです。
また、美観地区周辺には第一合同銀行倉敷支店など、大原家が残した近代建築がいくつもあります。
倉敷紡績の社長、大原孫三郎が親友である画家の児島虎次郎の死後、昭和5年に設立した「大原美術館」は、その代表と言えるでしょう。
昭和30年代には本格的に町並み保存運動が始まり、1969年には倉敷市によって、倉敷川畔が美観地区に指定されています。まだ、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)の制度もなかった頃です。
現在では、この倉敷川畔も重伝建地区に選定されています。
本町通りやその脇道の路地などにも古い町並みが残る
倉敷川沿いの風景がやはり特徴的で知名度も高く、倉敷の町並みと言えばこちらを思い浮かべる場合が多いかと思います。
ただ、その北側を東西に走る本通りや本町通り沿いなどにも、やはり古い建物が多数建ち並んでいます。全長500メートル以上にも及ぶ、非常に大規模な町並みです。
また、川沿いと本町通りの間をつなぐ狭い路地の風景なども、非常に素晴らしいと思います。
倉敷では、とにかく気まぐれに脇道に入ってみることをおすすめします。
日没後の夕景も幻想的で美しい
陽が落ちた後も、美観地区では多くの建物がライトアップされていて、川面にその姿が映る幻想的で美しい風景が見られます。
人の数も少なめになるので、この時間帯の訪問はかなりおすすめです。
美観地区の周囲や、倉敷駅前にいくつもあるホテルに宿泊して、夕食後に散歩するのが楽しいです。
宿泊もできる人気のスポット、倉敷アイビースクエア
美観地区に隣接する「倉敷アイビースクエア」([PR]リンク先は楽天トラベル)は、明治時代に建てられた倉敷紡績の工場の建物をそのまま保存活用した施設で、レストランや倉敷紡績の歴史が展示された記念館などが備えられた複合観光施設となっています。
メインとなるのはホテルで、そのロビーなどの重厚さは、風格を感じさせる素晴らしいものです。美観地区の中心からは徒歩5分で、ほぼ美観地区の中にあると言っても良いと思います。
夜の散歩にも、最適なロケーションと言えるでしょう。
宿泊料金も意外とそれほど高くはなく、泊って良かったと非常に満足したホテルでした。
倉敷に宿泊するならば一度はここに泊まってみてほしいと思います。
アクセス方法
鉄道利用の場合
JR倉敷駅までは、岡山駅で山陽新幹線から山陽本線に乗り換えて20分前後、運賃は330円です。短距離なので、特急列車などを利用する必要はありません。
山陽地方の大拠点ということで列車本数も多く、一時間に5本程度は走っています。
倉敷駅から美観地区までは、約1キロで徒歩15分ほどです。
駅前のメインストリートである「中央通り」を歩くのが一番近いのですが、飲食店などもたくさんある「えびす通り商店街」を歩いていくのが楽しいと思います。
なお、倉敷市内には、山陽新幹線の「新倉敷駅」があるのですが、「のぞみ」が止まらないうえに美観地区までは非常に遠く、結局は山陽本線に乗り換えて倉敷駅まで行く必要があります。
美観地区の観光に利用するのは、あまり現実的ではなさそうですが、羽黒神社周辺の玉島地区(こちらも素晴らしい町並みが残っています)に行ってみたい場合はこちらからバスを利用することになります。
マイカー・レンタカー利用の場合
山陽自動車道の倉敷インターが利用できる
市街地の北側を山陽自動車道が通っており倉敷インターチェンジがあります。
また、インターのすぐ東側にある倉敷ジャンクションへは瀬戸大橋で四国方面とつながる瀬戸中央自動車道も接続していて、まさに交通の要衝となっています。
倉敷インターチェンジから美観地区までは約5キロ、20分ほどで到着します。
ただし、倉敷市内の渋滞には注意が必要です。
市営の有料駐車場などが数か所利用できる
倉敷市芸文館に併設の「美観地区南駐車場」や倉敷市民会館の「美観地区東駐車場」などが30分100円程度で利用可能です(2022年12月現在)。どちらも150台前後の駐車が可能です。
南駐車場からは徒歩5分程度、東駐車場からは徒歩10分弱くらいの距離です。
倉敷アイビースクエアに宿泊する場合は、専用駐車場を一泊500円で利用できますが、こちらも徒歩5分程度です。
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たどり着くまで、途中も楽しい ~倉敷駅から美観地区まで歩いてみる~
にぎわいを見せる倉敷駅前
JRの倉敷駅から散策をスタートします。
駅の周辺は倉敷市の中心になる場所で、南側の駅前ロータリーの周りにはホテルやデパートが建っています。
北側には、以前はテーマパーク(倉敷チボリ公園)があったのですが、今は「アンデルセン広場」などが公園として残るだけで、あとは駅直結のアウトレットモールなどに変わっています。
実は倉敷市は、五十万人近い人口がいる、中国地方でも有数の大工業都市(広島市、岡山市に次いで第3位)なので、駅前がこれほど発展しているのも当然かもしれません。
美観地区があるのは駅の南側なので、天満屋デパート前のデッキを歩いて国道を渡ります。
駅正面に伸びるメインストリート、倉敷中央通りをまっすぐ歩いていくのがわかりやすいのですが、今回は「センター街」というアーケード商店街に向かいます。
ここには、ぶっかけうどん発祥の店だという「ふるいち仲店」があります。すぐ近くには本店もあるのですが、センター街にあるこちらのほうがにぎわっているようでした。
さらにセンター街を南に歩き、その先に続く「えびす通り商店街」を進みます。昔ながらの商店街という感じが好ましいです。
本町通りも素晴らしいが、やはりまずは川畔の風景
阿智神社西参道の石段が見えてきた辺りでアーケードも途切れ、通りの名前も「本通り」に変わります。
いよいよこの辺りから、古い町並みの雰囲気が漂い始めます。町家を利用したカフェやパン屋さんも通りに並び、大観光地の入り口を感じさせます。
本通りを歩いて行くと、旧中国銀行倉敷支店の立派な洋風建築(重要文化財)が見えてきます。
この建物の手前を右に曲がって路地に入ると、蔵などが建ち並ぶ運河(倉敷川)沿いに出ることができます。また、そのまま直進すれば本町の町並みが続きます。
(左折すると、阿智神社のある鶴形山のトンネルがありますが、この古いトンネルも一見の価値ありです)
どちらに進むにしても、最後は両方見ることになりますから、ここはなんとなくで決めてしまって良いと思いますが、初めて訪れたという場合はまず川沿いのほうを見に行くのが良いかも知れませんね。
やはりこれは、他ではちょっと見られないレベルの貴重な風景だと言っていいと思いますので。
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