高岡の古い町並みを歩いてみよう ~鋳物製造で知られる城下町~(富山県)

城下町・武家町
城下町・武家町重伝建地区北陸エリア

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 高岡は前田利長が隠居後に城を構え、商工業の振興に力を入れたことによって発展した城下町で、富山県西部の中心都市となっています。
 商人を集め、鋳物の製造に特に力を入れた結果、高岡の銅鋳物は現在でも高い全国シェアを占めています。その職人の技術を集めて作られた高岡大仏は、日本三大仏の一つにも数えられます。

 商人町であった山町筋と、鋳物作りが行われた金屋町には古い町並みが残り、どちらも国の重伝建地区となっています。
 また、小矢部川と庄川の河口近くにある高久地区にも、米穀の商いで栄えた古い町並みが残り、こちらも同じく重伝建地区に選定されています。

 この記事では、それらの高岡の町並みの見所や、実際にマイカーや鉄道などで古い町並みを訪れるためのアクセス方法について紹介しています。
 実際に訪れた際の訪問記も掲載していますので、こちらも参考にしてみてください。 

鋳物製造で発展した、呉西(富山県西部)の中心都市

高岡城の廃城後も繁栄が続いた、前田家の城下町

高岡・山町筋の町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 城下町としての高岡(富山県高岡市)の歴史は、前田利家の長男である利長が17世紀初頭に隠居の地として高岡城(現在の古城公園)を構えたことに始まります。

 城自体は一国一城令によってわずか数年で廃城となりましたが、利長とその跡を継いだ前田利常は引き続き城下町の建設に力を入れました。
 商人町(現在の山町筋)に商家を集め、また砺波から鋳物師を集めて鋳物製造を優遇しました。
  
 その結果、高岡市は現在でも銅鋳物では全国の九割のシェアを占めています。
 人口は16万人と富山県で2番目で、呉西(富山県西部)の中心となる商工業都市の座を維持しているという、計画的な産業都市としては大成功ということになりました。

 市内では、商人町であった山町筋と鋳物作りが行われた金屋町、そして米穀の商いで栄えた河口近くの吉久地区の主に三か所に古い町並みが残されています。
 いずれも、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定されています。

鋳物師町の金屋町と商人町の山町筋、二つの古い町並み

金屋町の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 千保川の北側にある金屋町はその名の通り鋳物師が集められた場所で、前田利長による城下町建設の一環として整備されました。
「千本格子の町並み」とも呼ばれるとおり、繊細な格子戸が特徴の町家が、約500メートルに渡る石畳の通りに建ち並んでいます。袖うだつの連続する様子も、いかにも北陸の町並みという風情がありますね。

 対して商人町であった山町筋は、重厚な土蔵造りの商家が数多く残る通り。
 いくつもの事業を興した高岡有数の商家、菅野家住宅(明治35年建築)は国の重要文化財になっていて、他にも県や市の文化財となっている明治時代の商家建築があります。

 赤レンガが目をひく旧富山銀行本店(2019年まで現役)の洋風建築がその中に混じって建つ様子には、一昔前まではここがメインストリートだった、という雰囲気が強く感じられます。
(現在では、路面電車の万葉線が走る国道156号線がメインストリート格になっているようです)

重要文化財・菅野家住宅(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 金屋町から山町筋までは少し離れてはいますが、距離は700メートル程度となっているので、徒歩でも両方を見に行くことが可能です。

国宝・瑞龍寺と日本三大仏の高岡大仏も必見

参道の「八丁道」も見事な瑞龍寺

国宝・瑞龍寺仏殿(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 高岡駅の南側には、前田利長の菩提寺として前田利常が造営した瑞龍寺(仏殿・山門等が国宝)があります。
 お寺自体も大変立派なものですが、利長公の墓所へと続く参道の「八丁道」も有名です。市街地の中を完全に一直線に900メートル近くに渡って伸びる参道で、こちらも一見の価値があります。 

瑞龍寺参道(八丁道)(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

銅器職人の技術の結晶、高岡大仏

 もう一つの名所が、大佛寺にある阿弥陀如来坐像の「高岡大仏」です。
 高岡の城下町ができた頃から、何度も焼失と再建を繰り返している仏像ですが、現在のものは1933年に建立されたもので、高岡銅器職人の技術の結晶とも言われています。

 台座を含めた高さは16メートル、奈良や鎌倉に比べると小ぶりですが、「日本三大仏」の一つとも呼ばれています。
 現在のものは約90年前の再建とはいえ、地元で長く信仰された歴史を持つ仏像ということで、価値は高いと思います。

高岡大仏(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

河口近くのもう一つの町並み、米穀の商いで栄えた吉久地区

高岡・吉久地区の古い町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 高岡の市内では、金屋町・山町通りのほかにもう一か所、吉久地区の古い町並みが、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定されています。

 小矢部川と庄川の河口近く、二つの川に挟まれた中洲のような地形の場所にある地区で、水運を利用するのに適した場所であったことから、加賀藩の年貢米を保管する倉庫(「御蔵」)が置かれていました。

 このため、米穀を扱う商人が集まるなどして繁栄し、かつての街道(旧放生津往来)沿いには「さまのこ」と呼ばれる出格子が特徴的な商家などの建物が、多数現存しています。

 高岡駅や、山町通りなどの市内の中心部からは路面電車の万葉線で30分くらいの距離なので、あわせて訪れるのも良いでしょう。
 足を運ぶ価値のある、見事な町並みを見ることができます。

高岡・吉久地区の古い町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)
吉久御蔵跡のある西照寺

アクセス方法

金屋町の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

マイカー利用の場合

能越道の高岡インターが近い

 能越自動車道の高岡インターチェンジが市街地の近くにあります。
 能越道は北陸自動車道・東海北陸自動車道から砺波小矢部ジャンクションで分岐する道路で、関西方面からも名古屋方面からも直結している形になります。

 高岡インターからは国道8号線・156号線などを経由して約5キロ、10分程度で市内の中心に到着することができます。 

繁華街近くの市営御旅屋駐車場が便利

 高岡市街の中心にある商店街、御旅屋おたや通りの近くにある「市営御旅屋駐車場」(350台駐車可能の自走式立体駐車場)が山町筋から徒歩5分ほどの場所にあります。
 駐車料金は60分以内無料で、30分すぎるごとに100円追加になります。

 山町筋から金屋町まではさらに徒歩10分ほどですが、金屋町のそばにも「金屋緑地公園駐車場」があります。
 こちらは無料ですが、10台分しかスペースがないので長時間の駐車は避けたほうが良さそうです。 


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鉄道利用の場合

新たな町の玄関、北陸新幹線の「新高岡」駅

 長らく町の玄関口だったJR北陸本線の高岡駅ですが、北陸新幹線開業によって北陸本線が「あいの風とやま鉄道」に移管となり、特急列車などが来なくなってしまいました。

 その代わりに新たにできたのが北陸新幹線の「新高岡」駅ですが、元の高岡駅からは2キロほど離れています。
 両駅間は路線バス(1時間に平均5本程度)で10分ほど。利便性は確保されていると言えます。

 新高岡でJR城端線に乗り換えれば高岡駅まで3分ほどなのですが、こちらは1時間に1本くらいしか列車がないので、利用しやすいとは言えません。

http://www.kaetsunou.co.jp/regular/shuttle6/
(加越能バス株式会社の新高岡駅発着バス案内ページ)


高岡駅からは路面電車の「万葉線」も利用できる

 高岡駅から山町筋までは800メートル程度、金屋町までは1.5キロほどです。
 ただ、路面を走る市内電車(万葉線)に乗って「片原町」の電停で降りれば、そこから山町筋までは200メートルくらいとなります。

 人口10万人台の町で市内電車が走っているのは全国でも高岡くらいで(鎌倉市内に江ノ電の路面区間がありますが)、観光の一環として乗るのも楽しいと思います。
 万葉線の運転間隔は15分に1本程度あり、高岡駅前から片原町までは5分くらいで到着します。運賃は210円です(2024年2月現在)

 小矢部川などの河口近くにある吉久の古い町並みへも、高岡駅からこの万葉線で約30分ほどとなっています。 

吉久の電停を出発する、万葉線のレトロな電車

城下町の風格を感じながら ~高岡の町を歩いてみました~

中心都市の風格がある商店街で

 その日は友人たちと一緒に富山の町並み巡りということで、越中八尾の町並みなどを見たあと、高岡までやって来ました。到着するともうすっかり日が落ちていて、駅前のビジネスホテルに泊まることにします。

 夕食を取ろうと、市街地の中心にある商店街の「御旅屋通り」に出かけて、居酒屋に入りました。その古風な名前の通り、かつては宿場があったそうです。
 この時はまだ、高岡で唯一の百貨店だった大和デパートが撤退する前。アーケード商店街の入り口にあるビルの一番上で、緑色の大和のマークが光っていたのを覚えています。

 その眺めは、富山西部の中心都市という風格を感じさせたものでした。
 しかし、地方デパートがどんどん減っていく今の状況では、撤退も仕方のないことなのでしょう。
(デパート跡の一階で、引き続き大和のサテライトショップが営業しているようで、食料品などが買えるようです)

大和デパート高岡店があった頃の御旅屋通り商店街

春先の城下町散歩

 翌朝、まずは城下町の商人町だった山町筋へ。御旅屋通り近くの市営駐車場からは、歩いてすぐです。
 二車線の道路の両側に土蔵造りの商家がいくつも並んでいます。その間に建つ、最近まで富山銀行の本店だった赤レンガの洋風建築も、町並みに違和感なく溶け込んでいました。
 いかにも、ひと昔前の地方都市のメインストリートという雰囲気が魅力的な通りです。
 金融機関の支店が数か所あって、ゆうちょ銀行(高岡郵便局)もこの通りにあったので、今でも経済の中心的な役割を持っているのかも知れません。

高岡・山町筋の町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 続いて、千保川の向こうにある金屋町へ向かいます。
 徒歩10分ほどの距離ですが、城下町らしい狭い通りをぶらぶら歩いて行くのは楽しいものです。
 山町筋と千保川の間の一帯は寺町のようになっていて、お寺がたくさんあるようだったので、ちょっと立ち寄ってみたりします。
 訪れたのが春先ということで、桜の花が咲いているのを見かけたりもしました。 

金屋町への途中で立ち寄った、大法寺

 黄金の鳳凰像がある鳳鳴橋を渡るとすぐに、金屋町。
 大通りだった山町筋とは全く違って石畳の狭い道沿いに町家が並ぶ様子は、北陸の古都と言った風情。静かな町歩きを楽しむことができました。

 全く個性の異なる二つの古い町並みが残り、町の全体に城下町の風格がある歴史都市の高岡。
 吉久の町並みもあわせて、おすすめできる町です。

金屋町の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

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