栃木の古い町並みを歩いてみよう ~関東有数の町並みが残る「蔵の街」~(栃木県)

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 栃木県の南側にある栃木(栃木市)は日光例幣使街道の宿場町で、市内を流れる巴波川(うずまがわ)の水運による物資の集積地となったことで「北関東の商都」と呼ばれるくらいの発展を見せた町です。

 日光例幣使街道沿いの嘉右衛門町や巴波川沿いなどに古い町並みが残り、関東有数の歴史都市ということで、「小江戸」「小京都」「関東の倉敷」といった数多くの異名を持ちます。
「蔵の街」として観光地としても人気となっていて、遊覧船が運航されていたり、古い家屋を利用した飲食店などもたくさんあります。
 かつての繁栄の面影を感じさせる豪商の蔵屋敷などを眺めながら、町歩きを楽しむことができる町です。

 この記事では栃木の町並みの見所や、実際に鉄道やマイカーなどで古い町並みを訪れるためのアクセス方法や駐車場について紹介しています。
 実際に訪れた際の訪問記も掲載していますので、こちらも参考にしてみてください。

関東有数の町並みが川や街道沿いに残る「蔵の町」

「北関東の商都」とも呼ばれた、一大商業拠点

嘉右衛門町の町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 栃木県の南側、関東平野が山地に接する辺りにある栃木(栃木県栃木市)は、江戸と日光を結んだ日光例幣使街道の宿場町として発展が始まった町です。
 市内を流れる巴波川(うずまがわ)の水運の拠点として、江戸との間でやりとりされる物資が集まるようになったことから、商業の町として「北関東の商都」と呼ばれるくらいに発展しました。

 このように江戸との結びつきが強い町で、その面影を残すということから川越(埼玉県)や佐原(千葉県)と並んで「小江戸」と呼ばれることがあります。
 また、「小京都」「関東の倉敷」とも呼ばれるなど多数の異名を持つ町で、これは関東有数の歴史都市であることを象徴していると言ってよいでしょう。

 市街地の北側、日光例幣使街道沿いの嘉右衛門町と、栃木駅により近い南側の巴波川沿い、そして「蔵の街大通り」と呼ばれるメインストリート沿いに古い町並みが残り、観光客にも人気となっています。
 嘉右衛門町の町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)にも選定されています。

 これだけの町並みが残ることになったのは、太平洋戦争時における戦災による被害が小さかったことも幸いしたようですが、昭和の終わりごろからすでに始まっていたという町並み保存に向けた取り組みの成果も大きいと言えそうです。

横山郷土館付近の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

日光例幣使街道沿いに町並みが残る嘉右衛門町

嘉右衛門町の町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 日光例幣使街道は、徳川家康を祀った日光東照宮と江戸との間を結んだ街道で、京都の朝廷からの捧げものを納める勅使(例幣使)が通ったことからこの名前がついています。
 栃木はこの街道の宿場町の一つ(栃木宿)で、今でもかつての街道だった道が、市街地の中心部を通っています。

 当時の面影を良く残しているのが市街地の北側にある「嘉右衛門町」の重伝建地区で、ゆるやかにカーブする旧街道の通りに沿って江戸後期から昭和初期にかけて建てられた建物が並びます。
 土蔵・石蔵造りの店舗(見世蔵)や木造の出桁造りの店舗が数多く残るのが特徴的で、街道沿いらしい趣が感じられる風景が見られます。

「嘉右衛門町」の名前は、16世紀末頃にこの地を開発した岡田嘉右衛門の名に由来するもので、その屋敷が「岡田記念館」として公開されています。
 この「岡田記念館」の周辺には、地区内でも最も多くの伝統的建造物が残されています。 

「岡田記念館」付近の町並み

「蔵の街」のシンボル的な存在、巴波川沿いの蔵屋敷

「塚田伝説記念館」付近の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

「栃木の町並み」のシンボルとなっているのが、「塚田歴史伝説館」周辺の風景です。
 木材回漕問屋を営んだ豪商、塚田家の屋敷を資料館として一般公開しているものですが、巴波川沿いに黒塀と白壁の土蔵がずらりと並ぶ景観はまさに圧巻で、他の場所ではなかなか見られないような貴重な町並みと言っても良いでしょう。

 この川沿いの道は遊歩道として整備されていて、この風景を眺めながら散策することができます。
 また、「蔵の街遊覧船」という、船頭さんによって操船される遊覧船が運航されていて、川を行く小舟の上から蔵屋敷の風景を楽しむこともできるようになっています。
 まさに、「蔵の街」観光の中心となっている場所です。

 同じ巴波川沿いには、同じく豪商の屋敷であった「横山記念館」(明治40年頃に建築)も保存されています。
 麻問屋と銀行を営んだ横山家の店舗兼住宅で、町家建築の主屋を挟んだ左右に石蔵が並ぶという、非常に珍しい造りとなっています。
 右側の蔵が問屋、左側が銀行として営業に用いられていたようです。
 川に面してこれらの建物が並ぶ風景には、なるほど倉敷を思わせるものがあり、こちらも栃木を代表する景観だと思います。

横山郷土館と巴波川(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

古い建物を使った飲食店などもある「蔵の街大通り」

「蔵の街大通り」の見世蔵(下野新聞社栃木支局)(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 栃木の町のメインストリート的存在となっているのが、町を南北に貫く「蔵の街大通り」です。
 大幅に拡幅はされていますが、この通りの一部もかつての日光例幣使街道に当たり、江戸時代に建てられた下野新聞社栃木支局(元は肥料商毛塚家の店舗)などの見世蔵がいくつも残されています。

 東武デパートやホテルなどのビルが立ち並ぶ町の中心地ということで、古い建物を利用した飲食店なども見られます。観光で訪れた際には、ここで食事や休憩をするのが良いかもしれません。
 栃木では、サメを用いた料理(「モロ」と呼ばれる)が名物とのことで、フライの定食を食べてみましたが、さっぱりとした癖のない味でなかなかおいしかったです。

昭和初期の家屋を利用した「なすび食堂」(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

かつては栃木県の県庁所在地だったことも

旧栃木市役所の栃木市立文学館(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

 栃木県と同じ名前の栃木市ですが、栃木県の県庁所在地は宇都宮市であって栃木市ではありません。
 ちょっと不思議なことになっていますが、もともと栃木県は宇都宮県と旧栃木県の二つの県に分かれていて、宇都宮県の廃止・合併により今の栃木県となったという歴史があります。
 しかし、名前は栃木県となったものの、県全体から見れば中心に近い宇都宮に県庁があるほうが便利ということで、結局は交通の要衝であった宇都宮に県庁は移転してしまったのでした。
 当然、反対運動もあったようですが、実らなかったようです。

 県庁があった場所には、船の行き来ができる堀がつくられ、現在でも「県庁堀」という名前で残っています。
 また、この県庁堀には大正時代に栃木市役所の立派な洋風建築が建てられ、こちらも「栃木市立文学館」として利用されています。
 この立派な建物を見ていると、県庁は失われても宇都宮には負けないという気概が感じられるような気がします。

 なお、今の栃木市役所は蔵の街大通りの東武デパートの建物(旧福田屋百貨店)に移転しています。
 店に入って、デパートと市役所が同居しているのにちょっと驚きました。  

アクセス方法

「塚田伝説記念館」付近の風景(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

鉄道利用の場合

 JR両毛線・東武日光線の栃木駅が町の玄関口となっています。
 ただ、栃木の街は結構広くて、塚田歴史伝説館周辺までは駅から徒歩でも1キロ以内ですが、嘉右衛門町となると駅から2キロ近くにもなり、東武日光線の新栃木駅のほうが最寄りとなっています。

 二つの駅の間には、市街地循環線などのバス路線が何系統か走っているので、バスの活用を検討してみても良いでしょう(市役所前で降りるのが便利)
 
https://www.city.tochigi.lg.jp/soshiki/20/325.html
(栃木市ふれあいバス利用のご案内)

https://www.city.tochigi.lg.jp/uploaded/attachment/53578.pdf
(栃木市ふれあいバス路線図のPDF)

 栃木駅へは、東北新幹線の小山駅からJR両毛線で約10分ですが、朝夕以外の時間帯には1時間に1本程度しか列車がないので、注意が必要です。
 東武日光線の栃木駅のほうは、スペーシアなどの特急列車も停まるので、1時間に4本前後の列車がありますが、新栃木駅は普通列車のみの停車のため本数は減ってしまいます。
 東武日光線は東北新幹線の小山駅とは接続していないので、東京方面からの列車で直接来ることになります。


マイカー利用の場合

東北自動車道の栃木インターが最寄り

 東北自動車道の栃木インターチェンジが、町から数キロのところにあります。
 高速を降りてから、古い町並みのあるエリアまで10分程度で到着することができるので、非常に便利ですね。

嘉右衛門町の無料駐車場や、うずま公園の室町無料駐車場が利用できる

 嘉右衛門町の重伝建地区に隣接した場所には無料駐車場が整備されていて、18台程度の駐車が可能となっています。
 また、塚田歴史伝説館の近くのうずま公園内には「室町駐車場」があって、こちらも川沿いの遊歩道まで歩いてすぐです。
 この「室町駐車場」、入り口には「月極」の表示があって一瞬混乱しましたが、立札の立っていない場所は観光客の利用も可能とのことで、割と停めやすかったです。

 ほかにも、蔵の街大通りには「とちぎ蔵の街 来街者用無料駐車場」などの駐車場がいくつも整備されています。
 また、嘉右衛門町から近い栃木市役所(東武デパートビル内)の立体駐車場も無料で利用が可能です。

 

白壁が輝く、真夏の栃木 ~見世蔵の町並みを歩く~

20年の時に耐えた町並み

 栃木の町を2度目に訪れたのは2024年の8月、前回は2000年頃の話なので、20年以上ぶりにやってきたということになりました。
 これだけ間隔が空いてしまうと、かつて歩いた町並みが市街地の開発で全く変わってしまう、ということも覚悟しなければなりません。
 ただ、この間の2012年に旧日光例幣使街道沿いの嘉右衛門町が国の重伝建地区に選定されていて、ならば景観の保全はしっかり行われていそうです。
 そんなわけで、期待と不安が混じり合う、なんとも微妙な気持ちでの再訪問となったのでした。

 レンタカーを運転して、小山から県道31号線経由で栃木の街に入り、駐車場を探して東武デパートの周辺などをうろうろするうちに、車は期せずして嘉右衛門町の旧街道に突入してしまいました。
 実はこの東武デパートは栃木市役所と同居していて、無料で立体駐車場に停められたらしいのですが、それは後になって気づきました。
 旧街道を走り出してすぐに、見覚えのある町並みが目に入ってきました。景観整備で綺麗になっている箇所はあるものの、ほぼ昔のままの風景が、そこには残っていたのでした。
 真夏の炎天下、見世蔵の白壁が強い陽射しを受けて輝いているように見えました。

嘉右衛門町の町並み(画像クリックでこの場所のGoogleMapが表示されます)

炎天下の町並み歩き、古民家の食堂でサメのフライ

 というわけで当日の気温は35度を軽く超えて、熱中症アラートが出ている状況。
 最近使い始めた日傘を差しつつ、同行メンバー三人で町並みを歩きはじめましたが、街道沿いを重伝建地区の入り口まで南下したところですでに危険を感じるレベル。
 昼食がまだだったので、行く手にそびえ立つ東武デパートに逃げ込んで食事をしようということになりました。

 中に入って驚いたのが、この建物は二階から上が全て栃木市役所になっているということでした。どうやら、閉店した地場百貨店の福田屋の建物に市役所が移転したらしく、その一階に東武百貨店に入ってもらって、商業施設として維持しようということにしたようでした。
 このような形で、街のシンボル的なデパートを守るというのは大変良い取り組みだと思います。

(メインストリート沿いに威容を誇る東武デパート&栃木市役所)

 ただ、食事のできるのがフードコードに限られるようで、他に何か店はないかと探したところ、ちょうど目の前の「蔵の街大通り」沿いに古い家屋を使った食堂があることが分かりました。
 何の下調べもせず、本当にたまたま立ち寄った形になったこの「なすび食堂」、栃木名物のサメ(モロ)の定食を出していることで知られるようで、これは珍しいと喜んでモロのフライ定食を食べることになったのでした。大変ラッキーだったわけです。

 ここから、さらに離れた塚田歴史伝説館の周辺まで往復する気力はもはや誰にもなく(というか、歩き続ければ熱中症の危険があるレベルの暑さ)、いったん車に戻って移動することになりました。
 このように、栃木の市街地は案外広くて、主要なスポットの間は1キロ近く距離があったりもします。
 それだけ大規模に栄えた町だったとも言えるわけですが、徒歩での観光の際には、しっかり事前に計画を立てておくことをおすすめする次第です。

(なすび食堂のモロ」のフライ定食)

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