熊川宿は、京の都と若狭を結んだ鯖街道の宿場町で、滋賀の近江今津とも街道で結ばれているという、まさに交通の要衝にあたる場所です。
川沿いの平地に発達した町で、陸路と水運両方で運ばれてきた物資の集積地でした。
街道沿いには今でも伝統的な商家が建ち並び、かつての繁栄ぶりを伝えています。
もっとも古いものは、1800年代に建てられた問屋で、重要文化財にも指定されています。
この記事では、そんな熊川宿の古い町並みの見所や、マイカーやバスで訪れる場合のルートについて紹介しています。
実際に歩いてみた際のレポートも掲載しているので、参考にしてみてください。
京の都と若狭の海を結んだ、鯖街道の宿場町
京都・福井・滋賀3方面の中間にある、交通の要衝
熊川宿(福井県若狭町)は、京の都と若狭を結んだ鯖街道(若狭街道)の宿場町です。
福井県と滋賀県の県境近くの山中にあって、滋賀の近江今津との間も「九里半越え」の街道で結ばれているという、三方向につながる交通の拠点です。
そばを流れる「北川」沿いに開けた平地に発達した町で、その立地の良さから物資の集積地として非常に発展しました。
陸路で運ばれる物資だけではなく、北川を利用した水運によって運ばれてきた物資までが、ここに集まったのです。
物資は単に保管されるだけではなく、商品として相場に合わせて売り買いが行われ、多くの利益が上がりました。
現在も残る立派な商家群は、得られた富の大きさを今に伝えています。
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「鯖街道」に沿って、伝統的な商家が建ち並ぶ
旧鯖街道沿いの1キロ以上に渡って、美しく整った伝統的な町並みが残ります。
袖うだつや、重厚な印象の虫籠窓が見られる厨子二階の町家が建ち並び、その保存状態の良さから国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)にも選定されています。
地形的に、熊川宿は風の通り道となっていて、古くから大火の発生が繰り返されてきました。
そのため、「家は燃えるものなので価値はない」とされてあまり建て替えが行われず、このような町並みが残る理由の一つとなったようです。
その名前の通り「鯖街道」は、鯖を初めとする海産物を京都に運ぶ重要ルートで、京料理の文化を影で支える役割を果たしたとも言われます。
また、逆に京文化の影響を受けることもあったようで、京都一乗寺の「鉄扇踊り」がこの地にも伝わっていたりします。
山中の宿場町にも関わらず、どこか洗練された印象を受けるのは、さまざまな文化が集まった場所だからという理由もあるのかもしれません。
重要文化財の町家や、旧村役場の資料館なども
非常に多くの伝統的家屋が残る熊川宿でも最古の「荻野家住宅」は国の重要文化財に指定されています。
1811年頃に建設されたもので、街道に面した主屋に荷蔵が隣接しているなど、当時の問屋の特徴を残す建物です。
蔵に、丸い窓が開いているのが目印で、すぐに見つけることができると思います。
また、昭和15年に建てられた旧熊川村役場の建物が保存されており、「熊川宿資料館(宿場館)」として利用されています。
熊川宿の歴史を物語る資料が多数展示されており、建物も内部も必見の施設となっています。
このように、各時代の様子を伝える多様な建物が残されている点も、熊川宿の魅力と言って良いでしょう。
アクセス方法
マイカー利用の場合
かつての街道のルートが国道303号線に
山中の宿場町ということで、高速道路などはありませんが、宿場町と並行するように国道303号線が走っています。
この303号線は、近江今津から国道27号線を経由して小浜方面までを結んでいて、かつての「九里半街道」と同じルートとなっています。
近江今津からだと国道161号線バイパスから303号線に入って約15キロ15分ほど、逆の小浜方面からは、舞鶴若狭自動車道の小浜インターチェンジから国道27号線などを利用して約20キロ15分ほどと、比較的簡単にたどり着けると思います。
「道の駅 若狭熊川宿」などの駐車場が利用できる
熊川宿の東の端に「道の駅 若狭熊川宿」があり、その駐車場を利用することができます。
また、宿場町のほぼ真ん中にある中条橋近くに、こちらも無料の「熊川宿駐車場」があるので、町並み観光にはこちらも便利です。
鉄道&バス利用の場合 ~北陸新幹線開通で利便性向上も~
熊川宿の近くに鉄道の駅はありませんが、JR湖西線の近江今津駅から小浜駅までを結ぶJRバスの若江線を利用することができます。
この区間には元々国鉄の若江線が建設される計画があり、バス路線はその代わりに運転されています。現在でも、近江今津・小浜間では最短の交通手段となっています。
京都駅から近江今津駅までは、日中に1時間に1本程度運転されている直通の新快速で50分ほど。他にも普通列車が運転されていて、一部の特急「サンダーバード」号も停車することがあります。
また、米原駅から近江今津駅までは、近江塩津で北陸本線から湖西線に乗り換えて普通列車で約1時間となっています。こちらも1時間に1本程度の運転です。
近江今津駅から若狭熊川バス停までのJRバスは約30分、本数は1時間に1本程度となっています。
運賃は京都駅からでも米原駅からでも同じで、合計で1,830円です(2024年3月現在)
また、2024年3月に北陸新幹線が開通した敦賀駅からJR小浜線に乗り換えて、途中駅の上中駅からこのJRバス若江線を利用して、若狭熊川バス停まで来ることもできます。
敦賀駅から上中駅までが約50分、そこからJRバスで約10分で、運賃は合計で1,100円となっています。
敦賀まで直通と言うのが便利なので、関東方面からだとこちらも選択肢になりそうです。
https://www.nishinihonjrbus.co.jp/route/jakkou/
(JR西日本バスの若江線案内サイト。沿道の詳しい案内も)
橋まで歩いてまだ半分 ~熊川宿を訪問してみました~
鯖街道をドライブする
京都から車で熊川宿まで行くには、国道367号線を経由するのが最短です。このルートはほぼかつての鯖街道そのままというのも魅力的です。
名神高速からだと、京都東インターから、ほぼ無料高速の161号西大津バイパスと湖西道路を経由して近江今津に出るというコースがお勧めですが、367号もかなり整備された快走路なので、所要時間は大きく変わらないかもしれません。
鯖街道の起終点だった出町柳から高野川沿いに北上し、八瀬・大原を走って花折峠を越え、朽木(くつき)を経由する367号線コースは、見どころ満載のドライブコースです。
単に通過してしまうにはもったいなくて、実際にはあちこち寄り道することになると思います。
「まちなみ街道」的に特におすすめしておきたいのは旧朽木村の中心になる「市場」集落で、旧街道筋の古い町並みや昭和初期に建てられた百貨店の洋館などが残っています。
歩いても歩いても町並み
さて、快適な国道を走ること約60キロで、「道の駅 若狭熊川宿」に到着します。
この道の駅は、宿場町の入り口だった番所跡の本当にすぐそばにあって、町並み歩きには最適な場所と言えます。
宿場のほぼ中心である中条橋の近くにも無料の駐車場がありますが、宿場町を端から端まですべて見ることを考えると、利便性はあまり変わらないかもしれません。
道の駅内の案内標識に従って、裏側の小道に出て少し歩くと、さっそく「鯖街道熊川宿」の石碑と「熊川番所」跡が見えてきます。
前方の道沿いに町家や、元々はかやぶき屋根だったのだろう農家などの建物がずらりと建ち並んでいるのが分かります。
通りの脇には水路が流れていて、宿場町の終わりまでずっと続いています。
妻入り・平入りの建物が混じりあって続く町並みを進んでいくと、橋の架かっている広い交差点に出ます。この橋が中条橋で、宿場町のちょうど真ん中に当たる場所になります。
ここから先が、特に見事な町並みが残る場所で、重要文化財の荻野家住宅や、旧村役場の熊川宿資料館「宿場館」などが集まっています。
しかし、全部で1キロ以上もある宿場町の全体から見れば、ここまででも半分ほど歩いた程度。
まだまだ、町並み歩きを楽しむことができるでしょう。
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