Episode4

 

水郷を行く 〜潮来・佐原〜

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琵琶湖の夕暮れ


好文亭からの眺め


デファクト・スタンダート


鹿島鉄道


蔵通りにて

 

 関東方面に、興味がある。それも、鎌倉や日光と言った有名観光地に限らず、もっとマイナーなところに行ってみたい気がするのである。恐らく面白い所がたくさんあるはずで、もし僕が首都圏在住なら、きっとそんな所ばかり巡っていたに違いないと思うのだ。

 と言うわけで今回のテーマは霞ヶ浦周辺、潮来と佐原である。正直言って、関西からわざわざ霞ヶ浦を見に行く人はいない。大きな湖が見たければ琵琶湖があるし、水郷なら近江八幡がある。しかしやはり、霞ヶ浦は霞ヶ浦であり、琵琶湖ではない。うまく行けば、類似性の狭間から、東西の文化の違いが浮かび上がってきたりするかもしれない。なお、今回も同行者がいるが、以前の愉快な仲間と同様、彼らの存在には触れないことにするので、ご了解いただきたい。

 まずは京都からはるばると、新幹線と常磐線を乗り継ぎ、水戸市へと向かった。ここでレンタカーに乗り換えて霞ケ浦へと向かうわけである。ちなみに水戸には幼少の頃、数年間だけ住んでいたことがあるのだが、それ以来訪れたことはない。そんな理由もあって、今回は水戸観光も兼ねたプランになっている。駅前の様子は、当時と大きく様変わりしてはいるのかもしれないが、うっすらとした記憶と重なって懐かしい。

 レンタカー屋さんの女性係員は、かすかな訛りが魅力的で、北関東に来たという実感がする。しかし残念ながら話し込んでいる時間はなく、すぐに出発しなければならない。走り出した車は、ナビゲーションの画面によれば、メインストリートを通過中である。僕の記憶には大都会として印象づけられていたこの通りは、実際には大都会ではなかったものの、地方都市の繁華街としてはまずまずの賑わいぶりに思えた。ただ、地場デパートが閉店していたりする様子を見れば、実情は楽ではないのだろう。

 当然のように、偕楽園へ向かう。三名園として名高い偕楽園は、もちろん水戸観光の目玉だ。しかし正直言って、これといった印象に乏しい庭園である。ストーリー性とか、世界の広がりなどがあまり感じられないのだ。兼六園や後楽園と並び称されるのが不思議な気がするほどで、好文亭からの眺めだけが印象に残った。もっともこれは、子供の時に近くに住んでいたことが影響しているのかも知れない。いわばここは、かつての庭なのだ。

 入り口近くにある売店の自動販売機で、一部で有名な「マックスコーヒー」を発見する。茨城・千葉のみで発売されているという、地域限定の缶コーヒーで、現在は「ジョージア」ブランドの一つとして生き残っている。さっそく飲んでみると、評判通りキャラメルを溶かしたような甘ったるさであった。この時は物珍しさを感じたのだったが、実はその後どこへ行っても、この黄色い缶をいやと言うほど見ることになる。この地域では、これが缶コーヒーの標準となっているのだ。

 いよいよ、霞ヶ浦へと向かう。まずは常磐自動車道を走り、石岡ICで降りる。石岡は、かつて常陸国府が置かれていたこともある、歴史のある町である。国分寺・国分尼寺跡など、見るべきものも多そうなのだが、今回は時間がないので通過するだけである。関東三大祭りの一つに数えられる「常陸國総社宮例大祭」が開催される町でもあるのだが、偶然この日がその祭りの初日に当たっていて、通過するだけでもかなりの時間がかかってしまった。

 石岡市街を離れた国道は、「鹿島鉄道」というローカル私鉄の線路と平行して霞ヶ浦へと向かう。非常にかわいらしい車両が一人で走っているのを何度か見かけたのだが、片手ハンドルで何とか撮った写真は、ぶれまくって何だかさっぱり分からなかった。しかし、そこに絵画的な趣があるのだと言い切って、敢えて載せてみることにする。ただしもちろん、こんな運転の仕方は厳禁なのである。念のため。

 途中の小川町と言うところで、少しだけ寄り道する。地図によると、ここには「蔵通り」という場所があり、国道からは近い。どんな通りなのか、見てみたくなったのだ。実際には、それほど蔵が並んでいるわけでもなくて、そもそも地元の人も「蔵通り」という呼び方は知らないようだった。あの地図は何だったのかとは思うが、それでもいくつかは印象的な建物が残っていて、寄り道してみた意味はあったと思う。

 さて、空が次第に広くなり、いよいよ霞ヶ浦が近づいてきたようである。こういう雰囲気は、やはり琵琶湖と似ている気がした。

 Chapter2へ続く

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